第77話 傷つける友人、助ける他人 その⑮

 だが、年明けを過ぎた頃、終野の様子が少しずつおかしくなっていった。

 やけに杉村と一緒に居たがるようになったのだ。そう、まるでいつも二人で居たい、思うように。

 その後「竹町がカンニングした」「万引きした」という悪い噂が流れるようになった。

 杉村はすぐに「そんなはずない!」とかばったが、なぜか当の本人である竹町が否定しなかったのだ。それどころか、急に杉村を無視するようになってしまった。

 そして数週間後、竹町は学校へ来なくなってしまった。

 それ以来、杉村は終野と二人きりで過ごすのが当たり前となってしまったのだ。

 

  

 それから終野は、杉村へ執着し始めていった。

 学校では登校から家に着くまでトイレの時も一緒、ラインは朝から寝るまで、家に居ると十件以上も続けてくる。

 休みの日も朝から家までいきなりやって来て、丸一日無理やり外へ遊びに行くか、お互いの自室で一緒に過ごすかの日々が続いたのだ。

 他の生徒と話そうとすると、いきなり割り込んで邪魔してくる。それを毎回必ず繰り返し、誰も話しかけないように仕向けてくる。

 高校受験が近づいた頃、さすがに限界となった杉村は、『せめて高校は別にしよう!』と考え、終野には内緒で別の高校=望ヶ丘高校を受けたのだった。

 だが、どこで知ったのか、終野も同じ高校を受けて合格していた。それを知らされた杉村は、今度こそ離れるために遠くの公立高校を受験しようとした。

 親と先生にも徹底的に口止めし、ひたすらごまかし続けた。

 受験日前日の夕方、終野と一緒に勉強していた時、終野がたくさんのお菓子を出してきた。

 そのお菓子は、すべてとても甘かった。さすがに全部は食べれなかったが、その時につい、何杯もコーヒーを飲んでしまったのだ。

 その結果、夜遅くまで眠れなかった。朝早く行かなければならなかったので早起きしたが、すごく眠たかった。

 朝食で、終野からもらったハーブティーを飲んだらさらに眠気が増してしまった。リラックスできる成分が入っていたが、この場合眠気がさらに増してしまったのだ。

 結局その受験は失敗してしまい、同じ望ヶ丘高校への入学が決まってしまった。せめて違うクラスになるように、と祈ったが、クラスも同じになってしまった時には絶望してしまったのだ。

 そして杉村は今日倒れるまで、終野から離れるための行動を起こす気力もないまま、毎日ただ一緒に過ごすしかできなくなってしまった、という訳だった。


「そんな事情だったの…」

 杉村が話し終えた後、華がそう呟いた。

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