第76話 傷つける友人、助ける他人 その⑭
ドアの左側に小さい机と椅子があり、そこには弁当箱と、丁寧にたたまれていた制服が置かれていた。そして、制服の上にはリボンの髪飾りが置かれていたのだ。
その髪飾りは、この小部屋の外にある別のベッドに寝かせた時には、まだ杉村の髪につけたままだった。どうやら髪飾りは、結達が保健室から出た後に外したらしい。
結と安田が保健室まで運んだ時、杉村はまず小部屋の外に置かれていた別のベッドに寝かせられた。だが、結達から終野の話を聞いた保健室の先生が、その後すぐにその小部屋へと杉村を移動させたほうがいい、と判断したのだ。
そのおかげで、杉村は今まで一人でゆっくり休めた。もし終野が傍に居たら、休むどころかますます疲れていただろう。
「…まだ、だめです」
右手を頭から離した杉村は、シーツへ右手を入れることなく、そう答えた。
「そう。なら無理に食べないほうがいいわね」
保健室の先生からの判断に、杉村はほっとした顔になる。
「ねえ、前から聞きたかったけど、何で終野さんは杉村さんにべったりくっついているの?」
突然、華が遠慮なく聞いてきた。
「…華さん!」
まだ休んでいる最中なのに、いきなりそう聞いてきた華へ、結は待ったをかける。
「…いいよ!」
嫌な顔どころか、救いの神が現れた!という表情で、杉村はベッドから起き上がる。
ベッドの上で座り、きちんと足を揃えた杉村は、華達の顔を見ながら、口を開き始めた。
終野に出会ったのは、中学三年生の二学期だった。
自分のクラスに転校してきた終野は、杉村の隣の席に決まった。それがきっかけで話をするようになったのだ。
それからは、もう一人の友人である竹町さやかと一緒に行動するようになった。竹町も終野を受け入れてくれたので、時々休みの日にお泊り会を開くなど、特に問題なく仲良く過ごしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます