第75話 傷つける友人、助ける他人 その⑬

「失礼します」

 六畳ほどの広い部屋は、思っていたより明るかった。

 部屋の奥の方に、大きなベッドが置かれていた。そこにはジャージのまま、白いシーツの中で横たわっていた杉村がいたのだ。

「杉村さん、具合はどう?」

 真っ先に声をかけたのは、安田だ。背を向けていた杉山はゆっくりと結達が居る反対側へと体を動かしてきた。

「安田さん…?」

「無理に起きようとしなくていいよ。気が付いて良かった」

 杉山の様子を見て、安田はそんなに気分が悪くなさそうだと判断した。

「…霧島さん、ありがとう…」 

 そして真ん中に居た結を見るなり、杉山は小さな声で礼を言った。

「どういたしまして。杉村さんに怪我がなくて、良かったです」

 顔色が少し良くなっていたのを見て、結は安堵する。

「そして、ごめんね…。終野さんが」

 ベッドの上で横になったまま、右手で頭を抱えながら杉村は泣きそうな顔で結へ謝罪した。

「いえ、杉村さんは何も悪くありません。私は、特に気にしていませんから」

 安心させるように、結は優しく話す。

「そうよ!結は現代文の授業で妨害されても、全然余裕だったわよ!逆に、終野さんが先生に当てられて恥をかいたんだから!」

 春山先生に教科書を朗読するように指名された後、終野はしどろもどろになってしまい、先生からも「家で練習するように」と言われてしまったほど酷かったのだ。

「そうなんだ…」

 結の右側に居た華が自慢げに説明したのを聞き、杉村は目を丸くした。

「ホント、凄かったよ!霧島さんは」

 結の左で立っていた安田も、同じく称賛する。

「ありがとうございます」

 二人から褒められ、結は思わず少し照れてしまった。

「杉村さん、お昼食べれる?」

 後ろ側へ移動していた保健室の先生が、杉村へそう質問する。

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