第73話 傷つける友人、助ける他人 その⑪
「杉村さん、まだ回復していないと思うけど…」
手ぶらで結の近くまで来た安田が、心配な顔で呟く。
「終野さんは、私達の後に教室へ入ってきた時には不満そうな顔でしたから、お昼休みならもっと長く居られると思って行ったのでしょう」
結からの説に、安田は「ありえるかも」と同感した。教室だけでなく、トイレも移動教室へ行く時も、終野はずっと杉村にぴったりくっついていたのだ。
「でも、杉村さんは『もうウンザリ!』ってみたいな顔をしていたわ。それじゃあ休まらないでしょう」
お弁当を出す前に、華が今までの事を思い出したように言う。
「それなら心配ないよ。杉村さんが寝ているベッドは、保健室の奥にある、ドア付きの小部屋の中にあるから。プライバシーは、バッチリだよ!」
望ヶ丘高校の保健室には、安全を確保するための鍵付きの
小部屋まで用意されていたのだ。鍵は保健室の先生が持っているため、簡単に入れないようになっている。
「でも、先生が入れてしまうかもしれないし、気になるわ…」
「それでしたら、終野さんの事は話しておきましたから」
念のため、結達は終野に粘着されていた事を保健室の先生へ話しておいた。
「あと、お昼を食べた後、様子を見に行きます」
「私も行くよ。保健委員として当然だし」
心配する華に対し、結と安田は『杉村の様子を見に行く』と宣言した。
「なら、私も行くわ!杉村さんとは、じっくり話をしたかったの!」
その宣言を聞いた華は、二人に同行する事を望んだのだ。
お昼を食べた後、結と安田と華はすぐ保健室へと向かった。
速足で廊下を歩いていた三人は、保健室の前で一度立ち止まる。終野が居ないか確かめるためだ。
結がそっと伺うと、保健室の前には誰も居なかった。もしかしたら、すでに中へ入っているかもしれない。
保健室のドアの前まで来た結達は、数回ノックした後、
「失礼します」と、ドアをそっと開けた。
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