第71話 傷つける友人、助ける他人 その⑨
体育の授業が終わると、終野は真っ先に運動場から走り出した。
中履きへと履き替え、体育館の横の更衣室へ一番乗りをすると、大急ぎで制服に着替え始める。結達が着いた頃には白いブラウスを着て、スカートのホックを留めていた。
ブレザーを着た後、ジャージを学校指定の専用のバックへ無造作に詰め込む。そして、杉村の制服を持ち出すと、凄いスピードで更衣室から出て行ったのだ。
「ちょっと!ドア閉めて!!」
丸見えならないように仕切りがあったが、それでも開けっ放しにするのは同級生達から非難されても仕方がない行為だ。
それを聞いた結が、脱いだジャージの上着を棚に置くと、すぐにドアを閉めに行った。下に半袖の体操服を着ていたので、もし見られても特に問題はなかった。
「ありがとう、結」
同じく半袖の白い体操服になっていた華から、礼を言われた。
結が「いえ」と返すと、すでに着替え終わっていた一部の女生徒から不満の声が聞こえてきた。
「…終野さんって、勝手すぎない?」
「杉村さんが倒れたのは、やっぱり終野さんのせい?」
どうやら、体育の時間から終野の行動が、他の同級生達が終野を非難するきっかけになったらしい。
「杉村さん心配よね…。私達は昼休みに様子を見に行こう」
もう少し休ませてからにしよう、とする安田の心遣いに、結は「はい」と同意した。
四時限目となる現代文の授業は、意外と気が抜けなかった。
昼前と、体育の授業の後ということで、担当の春山先生が冬沢先生と同じように不規則な順番で当ててくるのだ。
授業開始の時、安田が杉村の事を報告した後、最初に指名したのは流だった。それから数行ずつ朗読した後、次の生徒にまた続きを読んでもらう、という授業だった。
そうして何人か当たった後、次は結の番となった。結はすらすらと、教科書の文を分かりやすく読んでいく。
「先生はまだ」
その途中で、急に『ガッシャーン!!』という音が響いた。
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