第69話 傷つける友人、助ける他人 その⑦
突然そう言われ、結は少し驚いた声を漏らした。
「実は私、杉山さんが倒れるなんてすぐ気づかなかったの。杉山さんの体の具合が悪いのは気づいていたけど」
保健委員として、結より速く駆けつけられなかったのが不覚だと思ったのだろう。それでも安田は、一早く杉村へ駆けつけた結へ賛辞を贈ったのだ。
「…無我夢中でした」
気が付いたら、杉村を支えていた。結はそう思い出しながらそう答えていた。
「…前から思っていたけど、終野さんは杉村さんにべったりしすぎ。中学の時からそうだったけど」
「そうなんですか?」
「うん、私は杉村さんと同じ中学だったんだ。クラスは違っていたけど」
初めて聞く情報に、結はさらに聞き出そうとした。
「…いつからか、分かりますか?」
「確か、中三の二学期からだったと思う。終野さんが転校生として杉村さんのクラスに来たから」
「それまで、杉村さんは一人だったのですか?」
「ううん、小学校から仲良しの友達が一人いたよ。絵が上手い子で、初めは三人一緒だったの」
結からの質問へ、安田は嫌がることなく答えてくれる。まるで、霧島さんならすべて話してもいい、という顔だ。
「そのご友人は、別の学校へ行ったのですか?」
「…実は、よく分からないの。しばらくしてから、不登校になった、って噂が流れたから…」
そう話しているうちに、廊下を通り過ぎて運動場への入り口までたどり着いた。
「ありがとうございます、安田さん」
「どういたしまして」
頭を下げた結へ、安田は明るく笑った。
「安田さん、霧島さん、杉村さんの具合は?」
二人が戻ってきたのに気付いた冬沢先生は、笛を手に持つ前に聞いてきた。
「しばらく安静にすればよくなるそうです」
安田からの返事に、冬沢先生は「ありがとう」と労う。
「さて、後は貴女達だけだから、位置に着いて」
もうすでに、残りの二人の男子が白い線の前で走る準備をしている。安田と結も、白い線が引かれている場所まで行こうとした。
「せんせー!怪我をしている霧島さんに走らせるなんて、それってパワハラじゃないですかー!?」
突然、終野が咎めるように大声を上げた。
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