第67話 傷つける友人、助ける他人 その⑤
呼ばれた杉村は、ホッとした顔になっていた。ようやく、終野から離れられた。そう思わせる顔だ。
ふらふらとした足取りで、少しづつ目的の場所へ向かっていく。同じく向かっていた他の生徒は思わず「大丈夫?」と声をかけていた。
杉村は返事すらする余裕がないのか、そのまま歩いていく。
やがて白い線の前で立ち止まると、冬沢先生も心配した顔でゆっくりと笛を吹き始めた。
「――!?」
笛が鳴り響いた瞬間、杉村がよろけた!
一同が驚く中、先に動いたのは結だった。結は立ち上がると、前へ倒れそうになった杉村の身体を前から支えたのだ。
「杉村さん、立てます!?」
結の呼びかけに、杉村は反応がなかった。もしかしたら、気を失っているかもしれない。
「藍ちゃん!?」
終野が泣き叫びながら、杉山へ駆け寄ってきた。
続けて、冬沢先生も駆けつける。華と満も駆けつけようとした。
「藍ちゃん!?どうしたの!?返事をして!!」
大声で呼びかける終野へ、冬沢先生は「静かに」と人差し指を立てて制した。結が杉村の顔を見ると、真っ青になっていたのに気付く。
「保健室へ連れて行った方がいいです!」
いつもの冷静さを無くし、冬山先生へそう呼びかけた結を見て、冬山先生は事態を把握する。
「安田さん!貴女は保健委員だったわね、霧島さんと一緒に杉村さんを保健室へ連れて行ってあげて!」
「は、はい!」
奥の方で座っていた、長い髪を上で一つにまとめていた女生徒が、呼ばれて慌てて立ち上がる。
「なんで!藍ちゃんはわたしが運ぶのー!!」
冬沢先生へ抗議する終野へ、冬沢先生は落ち着いた声でこう話した。
「貴女はまだ走ってないでしょう。大人しく授業を受けて待っていなさい」
また諭す言い方をされ、終野はますます体をわなわなと震えさせる。
「霧島さん!変わって!!」
怒りの矛先を結に変えたのか、終野は足をじたばたさせていた。
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