第65話 傷つける友人、助ける他人 その③

 もう少しで朝のホールルームが始まる頃、二人の女生徒が教室へ入ってきた。

 二人とも、お揃いの髪型をしていた。背中の真ん中まで伸びた茶色の髪に、同じ大きなリボンの髪飾りを付けている。

 先に入ってきた女生徒は「間に合ったあ!」と喜んでいたが、一歩遅れて入ったもう一人の女生徒は朝からもう疲れ果てていると言わんばかりの顔だった。

「終野さん、杉村さん、おはよう!」

 教室の真ん中で、数人の女生徒と談笑していた華が笑顔で挨拶をする。しかし、終野は全然聞こえなかったように華の横を強引に素通りしたのだ。

「ほら、藍ちゃん!早く!」

 杉村の右手を無理やり引っ張り、終野は自分の席まで進んだ。痛みをこらえながら杉村は「…ごめんなさい」と小さな声で詫びながら、終野の前の席に座る。

 ちなみに席順は、男女別で、名字のあいうえお順になっている。これは異性に慣れていない生徒がいるかもしれない、という前提で行われており、次の席替えから男女混合となるのだ。

 杉村が座った後も、終野はいろいろと話しかけてきた。それに対し、杉村は返事をするのがやっと、というくらいに暗い顔だったのだ。

「ホント、終野さんって失礼よね」

「成宮さんからの挨拶を無視するなんて」

 それを見た華の近くに居る女生徒達が、終野を小声で非難しはじめた。

「まあ、人それぞれだから仕方がないわ」

 心の広さを見せるように、華がそっとたしなめる。周りの生徒達は、華の人間の格の違いを見て、さらに感心していた。

 そして結も、終野と杉村の様子を見て、ずっと引っ掛かっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る