第64話 傷つける友人、助ける他人 その②
休み明けの月曜日、望ヶ丘高校の教室の朝は生徒達の挨拶の声があちこちから聞こえてきた。
結のクラスである一年一組も、生徒達のお喋りな声があちこちから聞こえてくる。結は自分の席で、図書室から借りてきた本を読んでいた。
「おーす!流!」
「おはよー!満!」
その声が聞こえてきた時、結は思わず顔を上げる。その視線の先には、二人の男子生徒が立ち話をしていた。
「お、今日小遣いが当たったのか?」
「ああ、もういい加減に月一でまとめて渡してほしいのに、高校生になっても週に一回づつだからな。ようやく、これが飲めるぜ」
そうぼやいた満が手に持っていたのは、お気に入りのコーヒーだ。無糖だが満は平気らしく、流との会話の間に平気な顔で何度も口に着けていた。
(今日も、あのペットボトルのコーヒーですね)
結がその事に気づいたのは、入学してから次の週だった。満が何度もそのコーヒーを教室へ持ってきていたので、それが結にとって印象に残っていたのだ。
あの事件以来、満を見ると顔が赤くなる事に気づいた。だが、それを見られたら変な噂が流れて満に迷惑をかけてしまうと思い、なるべくいつも通り冷静になろう、と心がけたのだ。
そのかいあって、今は落ち着いて満の顔を見られるようになった。だが、あまりジロジロ見るのは失礼だと思い、結はすぐ本へ視線を戻したが。
ふと、満は結の方を見た。結は自分の席で、図書館から借りた本を読んでいる。
「あれって、京都の風景とかが載っている本だろ?霧島、なんか熱心に読んでいるな」
流が、結の集中力に驚いたように言う。表紙に桜の花と伝統的な建物が一緒に写っている分厚い本を、結はじっくりと読み込んでいるのだ。
「ああ」
真剣に読んでいる結を見た満は、感心した声を出した。
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