第63話 傷つける友人、助ける他人 その①
四月の土曜日の夕方、結は自室で座布団の上で正座をしていた。
結が釘付けになっていたのは、壁側に置かれたテレビに映しだされた映像だ。
京都の美味しい料理がテーブルの上に並べられ、二人の同じ年の少女達が向かい合わせで座って談笑している。笑顔で美味しい料理を食べている場面を見ていると、現実に居る結まで食べたくなってしまった。
「…美味しそうですね」
ついそう呟いた結が見ていたのは『京都ごはん日記』というアニメだ。原作は少年誌に連載されている漫画で、去年の秋から全国区で放送されていた。
京都の大学に通うため一人暮らしを始めた主人公が、アパートの隣の食堂の娘とひょんな事から友人となり、一緒にご飯を食べたり、または料理を教えてもらうという心温まる物語である。
結がこの作品にハマったきっかけは、料理をするシーンの描写が丁寧に描かれていたからだ。そして、食堂の娘の穏やかで心優しい人柄に魅かれ、今では原作の単行本を初版で手に入れるほどだ。
(私も、こんな友人が欲しいです)
この二人は性格は正反対だが、だからこそ喧嘩せずにお互い大切な友人として過ごしている。
これは絵物語で、現実はそうはいかない。結は高校一年生で、すでにそう悟っていた。
でも、それは自分の方に問題がある、と感じていた。従姉妹で才色兼備なお嬢様である華にコンプレックスを感じているから、つい卑屈になってしまうところも。
(…もし友人を作るとしたら、私自身もっと成長しなければならないですよね…)
そのためには、今日は料理に挑戦してみよう、と決意した結であった。
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