第59話 狙われたお嬢様 その59

「何言っているのよ!結は勉強ができるし、みんなも結が困っているところをさりげなく手助けしてくれる、って言っていたわよ!」

 結は自信を持っていいところがある、と華は言い切る。

 それでも結は、すぐに言葉が出なかった。代わりに、こう答えたのだ。

「華さん、ありがとうございます」

 結は、華がそう言ってくれたことについて感謝の言葉を述べた。

「さあ、そろそろ行きましょう」

 そう言いながら、結は華を立たせた。

「…結、ごめん」

 立ち上がった後、少しうつむきながら、華は反省したのだった。

 

 その後、華は教室へ、結は図書室へ向かった。

 華が向きを変える前に、満と流は静かその場を離れた。華に説教していたところを見ていた、と知られなくなかったからだ。

 それから先に教室へ行って、それぞれ学生鞄を持って教室から出た。華に『一足先に帰った』と思わせるためだ。

 玄関まで出た二人は、校舎の外へと走った。校門を出て、呼吸を整えた二人は顔を見合わせると「何か食ってから帰ろう」という結論を瞬時に出したのだった。


 学校の近くのファーストフード店でフライドポテトとジュースを飲み食いした満と流は、たわいもないお喋りで心も満たした。

 すべてが空になった後、二人は帰路へ着いた。流の家は満の家の近くなので、帰り道も一緒だ。

 辺りは薄暗くなりつつあるが、まだ安心して歩けるほど明るい。  

「…あれ、霧島じゃ?」 

 小夜川大橋を渡る前に、流が向こう側のブレザーの女子高生に気づいた。

「ホントだ」

 セミロングの黒髪少女は、速足で橋の近くまで来ている。

 右手に分厚い学生鞄を持っていたが、左手には何も持ってなかった。

「…霧島って、こっちの方向だったのか!」

「ああ」

 昨日、結を送っていった満は、流へそう答えた。

 スマホ歩きをしていないところが、結の真面目さを物語っている。結は満達に気づかず、橋を渡ろうとしていた。

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