第58話 狙われたお嬢様 その58
「まあ、成宮さんは霧島がよく一人で居るから、心配でそう提案したんだろうな」
華が満へそう提案した理由を、流はそう呟いた。
満も、華は意地悪なお嬢様ではないことはもう分かっていた。ただ、どんな善意の行動も、肝心の相手の気持ちをよく確かめてからではないと、まったく逆効果になってしまう事がある。
華は肝心の結の気持ちを確かめなかったから、当の本人である結からも怒られているのだ。そして今、華は渡り廊下の上で正座をして、結からの説教を受けていた。
「…あえて怒鳴らない、ってところが、かえって怖いよな…」
額に汗を一筋垂らしながら、流がその光景を見て呟く。
数メートル先の、結が腕を組んで、なぜ怒っているのかその理由を淡々と話している場面を見ていた満も、その迫力に何も言えなかった。
流が華を庇わなかったのは、さすがに今回は華が悪い、と思ったからだ。
大事な親友にあんな事を言うなんて、と、立ち聞きしていた流もあの提案が出てきた時、さすがに唖然としていたのだ。
一通り説教が終わった後、結はしゃがんで目線を華に合わせた。
「華さん、貴女の私を心配してくれる気持ちはもう分かっています。だけど、もう少し、私へ時間をくれませんか?」
「…時間?」
「自由に、好きなことを楽しむ時間です。私はまだ、一人で好きなことをやりたいんです。それが満たされば、私は自信を持つことができます」
「自信って…」
「私はまだ、自信が足りないんです。華さんのように、自信を持って行動することができないんです」
その言葉に、華だけでなく満と流も驚いた。事件を解決して、二人の人間の心を救ったというのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます