第57話 狙われたお嬢様 その57

 小学五年生の頃、満は突然、同級生である女子から告白された。

 なぜ自分なのか!?と戸惑う満へ、女子は何も言わなかった。ただ、目に涙を浮かべていて、泣きそうなところを必死で我慢している、そんな表情が気になった。

 満は「まず友達から」と返事とした。それから、休み時間だけでなく、休日も何度か一緒に遊ぶようになったのだ。

 しかし、それからしばらく経ったある日、急に話しかけてこなくなったのだ。その代わり、他の女子と遊ぶようになったので、満はそれでもいいか、と思い始めた。

 だがその後、クラスの中で「満がその女子に酷い事を言ってフッた」という噂が流れ始めたのだ。同じクラスの男子達もその噂を信じてしまい、満は孤立してしまったのだ。

 それでも、同じクラスだった流は満を信じてそばに居てくれた。

 話を聞いた祖父も、満を信じてくれたからなんとか耐えられたのだ。

 それから数日後、クラスのリーダー的存在であるお嬢様とその取り巻き達が満の悪口で盛り上がっていた時、そばで聞いていたその女子が泣き出したのだ。

 そして泣きながら「もう日野沢君をイジメるのはやめて…」と訴え始めた。たまたま通りかかった満と流は、そこで真相を知らされたのだ。

 その女子はお嬢様達からイジメを受けており、それを止めさせる代わりに満へ嘘告白をさせた。そうしてしばらく一緒に居て、満の情報を調べさせた後、黙って満から離れ、お嬢様達のグループに『友達』として入れてもらった、という。

 満がフッた、という偽の噂も、お嬢様達が流したのだ。貧乏人だから、という理由で、お嬢様はその女子の代わりに満をイジメて楽しんでいたのだ。

 しかし、嘘告白がきっかけとはいえ、満は真摯な態度で、誠意を持ってその女子を仲良くしてくれた。その満を裏切ってしまい、酷い目に遭わせてしまった罪悪感に耐えきれなくなり、ついに泣き出してしまったのだ。

 その事が先生の耳に入り、その後お嬢様達は校長先生からも厳しく叱られた。真相を知った同級生達は、全員満へ謝罪をしたのだ。

 そしてその女子は、両親と一緒に満の家まで謝りに来た。

 その時にその女子は、親の仕事の都合で転校する事を話したのだ。

 何度も謝るその女子へ、満は「もう謝らなくていい」と声をかけた。ずっとぐしゃぐしゃに泣いていたその女子は、ようやく泣き止んだのだ。

 それから、お嬢様からの直接なイジメはなくなった。が、陰で嫌味を何度か言われたが、満は聞き流した。

 六年生になった満は、クラス替えでお嬢様とは別のクラスとなった。それでようやく残りの小学校生活は、前より平穏となったのだ。

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