第56話 狙われたお嬢様 その56
一人残された華は、まだその場で立ちすくんでいた。
満から、結が周りに秘密にしていたアニメ好きな事を勝手に喋ったことについて怒られたのだ。
この幸澤市では、成宮家のお嬢様である華に本気で怒れる同級生はいなかった。小学校の頃から、同級生達は華の言うことに賛成していたのだ。
そしてお嬢様学校であった中学校でも、周りの生徒達は華の提案に賛成することが多かった。
高校生になってまだ日が浅いが、根室以外は華の提案に賛成してくれる。だから満も『結と付き合う』という素晴らしい案に賛成してくれる、と思っていた。
しかし、満は却下。さらに結の心を傷つけていた、と指摘され、華は今までにない衝撃を受けていたのだ。
「…華さん」
満とは違う、怒りを抑えた声が華の耳に届いた。
「…ゆ、結!?」
振り向くと、結が立っていた。まだ抑えているものの、全身から怒りのオーラがにじみ出ている。
「申し訳ありませんが、先ほどから立ち聞きさせていただきました…」
淡々とした口調が、かえって結の怒りを華へ伝えていた。
「…ほ、ほら、日野沢君なら…」
「その日野沢さんから、なぜ怒られたのか、まだ分かっていないのですか…?」
凄みが増した結の怒りの声に、華は青ざめた…。
「というわけだ、流、お前も言うんじゃないぞ」
校舎へ入っていった満は、廊下の端へそう声をかけた。
「…分かってるって」
そこから出てきた流は、満へ了解の返事をする。立ち止まった満の元へ、流は歩いて来た。
「…なんか信じられないんだよなあ。霧島が漫画好きって。教室で読んでいるのは、図書館から借りた小説本とかだし」
結が一人で自分の席に座っている時、図書館から借りた本を読んでいることが多い。有名なミステリーだけでなく、話題の専門書とかもよく読んでいる。
「漫画好きだからって、難しい本を読まないわけじゃないだろ?最近じゃあ、漫画がきっかけで興味なかったことを勉強し始めた、って話もあるぜ」
満の意見に、流は「それもそうだな」と納得した。
「…しかし、成宮さんのあの話はさすがに『それはちょっと』って思ったよ。満は小学生の時に、似たような事で嫌な目に遭っていたからなあ」
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