第55話 狙われたお嬢様 その55

「第一、俺と霧島が仲良くしろって、成宮が決めることじゃないだろ!それは当人同士が決めることであって、他の奴らが決めることじゃない!!」

 怒りは少し納まっていたが、満はさらに華へ抗議した。

「成宮にとって、一人でアニメと漫画を楽しむことは良くないことなのか!?自分がいい、と思うもの以外は、改めさせなきゃ気が済まないのか!?」

 満の抗議に、華は反論できなかった。今まで結と、その家族以外の周りの人は何でも言う事を聞いてくれたから、こんな風に反論されるとは夢にも思わなかったのだ。

「これからどう接するのかは、俺と、霧島が決める!俺は霧島の意思を尊重する!だから成宮はもう金輪際、霧島に対して余計な事を一切するな!」

 ダメ押しの一喝が、満の口から放たれた。

 華は、何も言えなかった。満から『今まで自分勝手な行動で結を傷つけていた』と言われたからだ。

「話がないのなら、もう俺は行っていいよな。ここで聞いた話は、他の奴らには言わないからな」

 そう言い残して、満はその場から立ち去ろうとした。

 

(………!!)

 こっそりと廊下の入り口の角に隠れて一部始終見ていた結は、現実に起こったカッコいい場面に顔を赤くしていた。

 満が、結を庇ってくれたのだ。しかも、今まで誰も諫めなかった華へ、あそこまではっきりと一喝してくれた。

(…まさか現実で、あんなにカッコいいシーンが見られるとは…!!)

 アニメや漫画、そして実写とは一味違うリアルなカッコよさに結は完全に釘付けとなり、最後まで目が離せなかったのだ。 

(…日野沢さん、神対応です…!!)

 今まで近くに居た男子みたいに「キモイ」とか言われると覚悟していたが、悪口を言うどころか華の勝手な行動に本気で怒ってくれたのだ。少女漫画なら、恋が始まるくらいの名場面だ。

 結は思わず感激していたが、深呼吸してすぐに気持ちを落ち着かせた。

―今のうちに、すぐやらなければならないことがある。

 満の行為に力をもらった結は、まだ動けなかった華へ向かっていった。

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