第52話 狙われたお嬢様 その52
「マジカルバディモンスターは、弟と一緒に前売り券を買って映画を見に行くし、その専門店もよく行ってるみたいなの。アニメのグッズの専門店もよく行くし、他にも深夜系のアニメを見ていて、そのDVDも買ってもらっているみたい」
華はどんどん、結はどれだけアニメと漫画が好きなのか、満が聞いていないのに喋り続けた。
「この間、コンビニでくじを引いたフィギュアを大事にしていたわ。欲しい物が手に入ってすっごく嬉しそうな顔をしていたけど、私が勧める物にはあまり興味がないのよね」
華は少しでもお洒落やブランド物をに興味を持ってもらおうとアクセサリーや化粧品を勧めるが、結は「私にはあまり似合わないから」と、あまり興味を示さないのだ。
「友達を作って、みんなでワイワイすれば楽しいのに、現実の男の子だけでなく、同世代の女の子にも無関心なのよね。だから、日野沢君が結と付き合えば、結も現実の男の子と楽しく遊ぶ良さが分かるはずよ」
すごく良い考えでしょ!と言わんばかりに華は得意げに言い切る。
要するに華は、結がイジメで現実の男の子が苦手になってしまった事を心配しており、そんなに警戒していない満と仲良くなれば、友達がいない寂しさから解放されて幸せになれる!と、思ってそう提案したのだ。
しかし、華はまったく気づいていない。
いきなりそんな提案を聞かされ、満の顔色がだんだん変わっていたこと。
そして本人が良かれと思っていても、肝心の相手の気持ちをきちんと考えていない善意は、単なる迷惑な押し付けとなることを。
―終わった…。
図書室へ続く廊下の入り口の角に隠れていた結は、心の中で絶望がこもった言葉を呟いていた。
階段を上がろうとしたら、華の声が聞こえてきたのだ。満と二人きりで話したい、と言ってきたので、気になってこっそりと聞き耳を立ててみた。
そうしたら、華が勝手にアニメと漫画が大好きなことを満へバラしていたのだ。
小学生の頃から、華はそうだった。アニメが漫画が好きな事を同級生達に勝手に喋ってしまい、そのせいで結は散々嫌な思いをしてきたのだ。
男子生徒に好きなキャラを冷やかされたり、しつこく主題歌を歌わされたり、と、もうそんな目に遭いたくなかったから、結は周りにバレないように、周りへ隠していた。
それで自分の事をまったく話さなかったから、親しい友人は出来なかった。一時期それで悩んでいたが、両親はそんな結を温かく見守ってくれた。
無理に友達を作らなくていい。一人の時は、一人で出来る事を楽しめばいい。
家に帰れば、家族と楽しく過ごせる。だから結は今まで孤立しやすい学校生活を耐えれたのだ。
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