第51話 狙われたお嬢様 その51

「日野沢君、ちょっといいかしら?」

 校舎側から掛けられた明るい声に、満だけでなく流も振り向いた。

「…成宮?」

「成宮さん!?」

 少し離れた所から、華がこっちへ近づいて来るのが見えた。優雅な足取りでやって来た華は二人の前で止まると、流へこう頼み始めた。

「申し訳ないけど、風山君は席を外してほしいの。日野沢君にだけ、話したいことがあるから」

「…何だ?」

 ショックを受けた流に対し、満は疑問の声を出す。何も心当たりがないので、なぜ華が二人きりで話したのか見当すらつかない。

「あ、告白するとか、恋愛の話じゃないから。風山君、お願い、ね?」

「…分かったよ、成宮さん」

 華が満へ恋心を持っているとかではない、と聞いて流はゆっくりと校舎側へと歩いて行った。


「で、何の話だよ?」

 流の姿が見えなくなった後、満は華へ聞いてきた。

「日野沢君は、結の事をどう思っているの?」

「はあっ!?」

 華からの質問に、満は驚く。いきなり霧島の事を聞かれるとは予想もしなかった。

「結はどうやら日野沢君にだけ、心を開いているって感じなの。現実の男の子に対して、まだ怖がって警戒しているみたいよね」

 まるで前から悩んでいる、というように、華はちょっと困った顔でそう言った。

「…そうなのか?」

 鳥山とか自分以外の男子にも、そんなに警戒していなかった、と満は思っていた。

「結は小学生の時にクラスの男の子からいじめられていたの。私が『結はアニメと漫画が好きだ』って言ったら、ますますひどくなったって、結は怒っていたわ」

「…はあ!?」

 満が答える前に、華はどんどん結の過去を話し始める。

「結の家は伯父さんと伯母さんもアニメと漫画が好きなのよ。だから結もアニメと漫画が大好きで、よく雑誌を読んだり、ネット配信も見ているのよ」

 さらなる結のプライベートな部分を、華はどんどん喋り始めた。

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