第50話 狙われたお嬢様 その㊿

「もし、何か困ったことがあったら、僕でよければ遠慮なく相談してほしいんだ。今度は僕が、君の力になりたいから」

 先生に言う前に、直接話をして自首を進めてきた結へ、鳥山は恩を感じていたのだ。

「分かりました」

 結は、鳥山の気持ちを受け取ることにした。結は見返りなしで行動したのだが、鳥山から感謝されたのは正直嬉しかった。

「あ、僕はバイトがあるからこれで」

 そう言い残して、鳥山は校舎の方へと向かった。


 鳥山が通り過ぎた後、廊下の反対側の曲がり角から二人の男子生徒が鳥山を見送っていた。

「…なんか霧島ってすごくない?」

 流が、ふとこう呟く。事件を起こした鳥山を改心させ、それにより嫉妬心に囚われていた田川も反省させたのだ。

「ああ」

 先ほどの結と鳥山の会話を一緒に立ち聞きしていた満も、同意していた。

「霧島って、地味でおとなしくて、言っちゃ悪いけど成宮さんの引き立て役っぽいところがあるけど、事件を解決して、さらに鳥山達を改心させたんだよなあ」

 結が頭がいいのは知っていたが、ドラマみたいに謎を解いてしまったのには、流も驚いたのだ。

 しかも、鳥山達が自分から罪を認め、誠心誠意で謝罪したのだ。そうさせた結の手腕に、流は感心したのだ。

「霧島は普段から、周りをよく見ているからな。それに、困っていたらさりげなく助けるし」

 教室内では一歩引いていて、少し浮いている結だが、その位置だからこそ周りの様子をよく見れるのだ。そして目の前の人が困っていたら、相手を瞬時によく見て押し付けがましくならないように助ける。

 満は、いつしか『そういうところがいい』と感じていた。縁の下の力持ち、という役割を進んで引き受けているところが。

「お前も、ちゃんと田川へ疑ったことを謝ったし。これで事件は解決だな」

 元警察官の祖父の影響で、よく刑事ドラマを見ている満は決め台詞のように言った。

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