第49話 狙われたお嬢様 その㊾
次の日、学校は事件がなかったように穏やかな事件が流れていた。
鳥山と田川が犯した罪は、華の両親が頼んだことから公表されなかったのだ。もう二人は十分に反省して謝罪してくれたから、と。
そのため、鳥山と田川は周りから何も言われずに、学校生活を続けられた。ただ、二人とも急に休日はボランティアをすることについては「学校から勧められたから」と答えたが。
この学校には、罰としてではなく自主的にボランティアをする生徒が意外と多い。だから二人がそう話しても、懐疑的な目で見られることはなかったのだ。
さらに、辞書が落とされた事件があった日はすべての部活が休みになる日だった。それで、ほとんどの生徒は掃除が終わるとすぐに校舎から出ていたので他の目撃者はいなかったのだ。
ちなみに田川がその時に「部活が終わって教室に行った」と言ったのは、一方的に疑われたので自分ではないことを証明したいあまりついそう言ってしまったからだ。事件の衝撃が強かったから、その場にいた全員が部活がなかった事を思
い出さなかったのだ。
なお、結は当日の夜にそれを思い出したが、田川がますます疑われるため、事件が解決するまであえて言わなかった。
そして田川の親が学校に呼び出され、華へ残りのお金を返す前に、理由を説明した春山先生が「その日は、すべての部活は休み」だった事を話したことから、ここでようやく結以外の生徒が思い出したのだった。
「お父さんの再就職が決まったのですか?」
放課後、図書館へ行こうとした結は、渡り廊下の途中で鳥山から呼び止められた。
「うん、前の会社へ戻れることになったんだ。パワハラした上司が県外の子会社へ左遷させられて、新しく上司になった人から『ぜひ戻ってきてほしい』と連絡があったんだって」
嬉しそうに話す鳥山を見て、結は華の父親がその会社へ話をしたのだ、と気づいた。
幸澤市で絶大な影響力を持つ成宮グルーブとの契約を切られないために、パワハラ上司を追放させて鳥山の父親を再び雇うようにしたのだ。
「今日の昼にいきなり電話があったからびっくりしたけど、本当に良かった。これも霧島さんのおかげだよ」
「いいえ、私は何もしていませんよ」
そうしたのは華の父親だと思う結へ、鳥山は続けてこう言った。
「いや、霧島さんが僕の悪事を暴いてくれたから、僕は悪い事をしている自分を反省できたんだ。僕を止めてくれて、本当に感謝している」
鳥山の目は、真剣だった。この目を見ればもう二度と過ちを犯さないと思えるほど。
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