第48話 狙われたお嬢様 その㊽
その後、鳥山と田川は職員室へ行き、春山先生へすべてを話した。
すぐに二人の両親へ連絡した春山先生は、結と華の両親にも来てもらえるように結達へ頼んだ。学校で起きた事件なので、このまま学校に来てもらって今から話し合いをした方がいい、と春山先生は判断したのだ。
それから満と流は春山先生から、先に帰宅するように言われた。満達は離れた場所で辞書が落とされる事件を目撃しただけなので、後日改めて詳しく話すことになったからだ。
満と流が帰った後、結達四人は春山先生と共に応接室で親が来るのを待った。その間、結は宿題をし始めていたので残りの三人も、一緒に宿題をやり始めたのだ。
先に鳥山の両親が応接室へ入り、続いて田川の両親が青ざめた顔で入室した。少し時間が経った後、華の両親と結の両親が冷静な態度でやって来たのだ。
春山先生から事情を聞いた鳥山と田川の両親は、すぐに華と結の両親へ頭を深く下げながら謝罪した。特に鳥山の両親は、さらに土下座しかねないくらいに。
華からすでに詳しく聞かされた成宮夫妻は「娘がすでに許しているから」と、大事な娘に悪い事をした田川と鳥山を寛大な心で許したのだ。
それどころか、華の父親は鳥山の父親へ「うちの会社で働きませんか?」と誘ったのだ。華から、鳥山の父親がパワハラによって会社を辞めていたことを知らされていたから。
だが鳥山の父親は、その申し出を辞退した。息子が酷い事をしたので、受けるわけにはいかなかったからだ。
それを見た鳥山は、改めて華にしてしまった事を酷く後悔した。もしあんな事をしなければ、快く受けてくれたのに、
と。
そして結の両親も、同じく「娘が許したから」と鳥山を咎めなかった。これにより、鳥山と田川は華達だけでなく、二人の親からも許されたのだ。
学校側は被害者である華達からの処遇を受け止めた後、鳥山と田川へこう告げた。
『明日までに反省文を書くこと。そして四月中の休みの日は学校が指定したボランティアを行うこと』
これが、学校で事件を起こした二人への処分だったのだ。
停学を覚悟していた二人側にとって、思っていたほどそう重くない罰だった。しかも鳥山はバイトの時間に重ならないように決めてもいい、と言われたのだ。
そう告げられた鳥山と田川の目に涙が零れていた。
安堵と後悔、いろいろな感情が混ざった二人の顔を見た結は、これでもう鳥山と田川は大丈夫だと、心の中でそう思ったのだった。
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