第45話 狙われたお嬢様 その㊺
保健室へ着いた華は、結に促され中へと入っていった。
昨日、話をしていた相談用のスペースには鳥山と田川が待っていたのだ。二人とも、覚悟を決めた顔をしていた。
「鳥山君、どうしたの?」
そんな二人を見て、華が尋ねる。鳥山が口を開こうとしたその時、
「鳥山君は、怪我させる気なんかなかったのよ!悪いのは、そのきっかけを作ってしまった私なんだから!!」
田川が、鳥山をかばったのだ。
「どうゆう事だ!?」
華の後ろに居た流が、面食らった顔になる。流もあの事件が起こった時に居合わせていたので、華と一緒に真相を話しておいた方がいい、と思った満が流にも連絡して呼び寄せたのだ。
「成宮さん…、校舎の窓から田川さんの辞書を落としたのはこの僕なんだ。わざと君を危ない目に遭わせたのは、その時に君を助けることで、今日の朝に相談していた父の再就職先を世話してもらうためだったんだ…」
鳥山はうつむいたまま、華へ真相を告白する。その声は、謝罪と後悔、そして罪悪感であふれて、震えていた。
「霧島さんにそのトリックを見破られて、僕は過ちに気づいたんだ。いくら父の事が大切だからって、こんな方法は間違っているって…」
華は驚いているのか、目を丸くしていた。
「…マジかよテメエ!!」
代わりに激怒したは、流だ。鳥山に掴みかかろうとするが、
「待て!流!!」
頭に血が上った流を、すぐに満が前に出て止める。鳥山に殴りかかろうとする流を、満が肩を掴んで落ち着かせた。
「…鳥山君がこんな事をしてしまったのは、私が成宮さんの財布からお金を盗んだからよ…。証拠がなかったから、先生とかに調べさせるために、私へ罪を着せようとしたの…」
流の怒りを鎮めようと、田川がさらに己の罪を告白する。
「…はあっ!?」
さらに信じられない事実に、流の怒りはますます上昇した。
「…つまり、私のお金を盗んだのは、田川さんってこと?」
ようやく事態が飲み込めたのか、華はそう呟く。
「…そうよ」
「…田川さんはお金に困っていたから、盗んだってこと?」
白状した田川へ、華はあまり気にしていない口調で聞く。
「…お金を持っているから何でもできるアンタを、困らせた
かったのよ!」
呑気な華の態度にイラついたのか、田川は八つ当たりするように叫んだ。
「だからと言って、金を盗んでいいわけないだろ!!」
華からお金を盗んだ理由を聞き、流は叱咤する。
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