第43話 狙われたお嬢様 その㊸

「…嘘!?」

 鳥山から明かされた真相に、田川は絶句する。

 放課後、部活がなかったので帰ろうとしたところ、鳥山に呼び出された田川は、保健室までついて行った。

 もしかしたら鳥山がどこか怪我をしたのでは!?と不安がる田川へ、鳥山は急に頭を深く下げて謝罪をしたのだ。

 謝罪した理由が、昨日の事件の犯人に仕立てようとした事だと知らされた田川はショックのあまり言葉が出なかった。まさか鳥山が、自分に罪を擦り付けようとしたなんて…!

「…君に申し訳ない事をしたのは、心から謝罪する。だけど、君は一昨日の放課後、成宮さんの財布からお金を盗んだを見たから、確実な証拠がない君の悪事を暴くには、これしかないと思ってしまったんだ」

 鳥山がこんな極端な方法をとってしまったのは、小学校時代のトラウマが原因だった。当時、教室で文房具が無くなったのは一人の同級生が盗んだからだ!と決めつけてしまい、その生徒を大勢の前で糾弾してしまったのだ。

 だが、その後、文房具は別の生徒が間違えて持っていった事が分かり、今度は鳥山がしばらく周りから白い目で見られてしまった。その同級生は鳥山のそんな様子を見て後に許してくれたが、鳥山にとって今でもその時の辛さと後悔は深く心に刻まれているのだ。

「…鳥山君に、見られていたなんて…!!」

 まさかあの時、一昨日の放課後に部活へ行った華の財布からお金を盗んだところを見られていたとは思わなかった。しかも一番知られたくなかった人に。

「あの時、僕は田川さんの様子がどこかおかしかったからちょっと気になったんだ。君は一番早く教室を出て行ったけど、図書室で時間をつぶして、みんなが出て行った後に成宮さんの財布からお金を盗んだところまで見ていたんだよ」

 思えば、この時の様子をスマホで撮影しておけば、すぐに田川の悪事を止めさせられたかもしれない。この後、そうしなかったのは、鳥山の中である計画が浮かんでしまったからだ。

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