第42話 狙われたお嬢様 その㊷

 その動画は、小夜川大橋の袂を映していた。

「あそこは夜桜見物に来る人が多いので、監視カメラが多く設置されているのです」

 画面の端に、人が映っていたのだ。黒ずくめの人物が、何やらごそごそと動いている。

 よく見てみると、服を脱いでいたのだ。黒い服を脱ぐと、茶色のトレーナーと水色のジーパンの姿になった。

 さらに来ていた上着を裏返すと、真逆の白いパーカーだと分かった。黒いマスクとサングラスをたたんだズボンの上にのせると、上着でくるんで橋の下へと投げ捨てたのだ。

「…これって、鳥山だよな!」

 昨日、不審者が去った後にやって来た鳥山と同じ格好していた動画の人物を見て、満は断言した。

「この監視カメラの映像は、父の友人である刑事さんから送ってもらいました」

「ええっ!?」

 結の父親の友人に刑事がいて、さらに動画を送ってもらった、と知った二人は同時に驚きの声を上げていた。

「今日の朝、この動画を見た事で昨日の事件の犯人は鳥山さんだと確信できました。そして、なぜこんな事をしたかのは、昼休みに華さんの話を聞いて見当がついたのです」

「…じゃあ、霧島さんはもう、僕が犯人だと気づいていたんだね」

「ええ」

 鳥山の弱弱しい声に、結は肯定するように頷く。

「…そうか」

 もう言い逃れが出来ない、と分かった鳥山はその場で膝をついていた。


「…どうして、田川が疑われるようにしたんだ?」

 犯行を認めた鳥山へ、満はさらに聞きたい事があった。

「もし霧島が言っていたやり方なら、田川がいなくてもよかっただろう!?なんで田川がいた時に引っ張ったんだ!?」

 あのタイミングで辞書を落とせば、当然のようにそばに居た田川が疑われる。まるで田川に罪を着せるやり方をした鳥山へ満は怒りを露わにしていた。

「田川さんが、華さんのお金を盗んだからですね?」

「…ああ」

 結からの問いかけに、鳥山は肯定した。

「何だって!?」

 またしても予想外の事件に、満は愕然とした。

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