第15話 狙われたお嬢様 その⑮
「私は辞書を落としてないって!なぜか財布と一緒に窓の縁の上に置いてあったから、拾おうとしたらその前に落ちていったのよ!」
必死な顔で、田川は無実を訴える。だか流は単に言い訳していると言わんばかりに、まだ怒った顔で田川を睨んでいた。
そのやり取りを見ていた満は、辞書に書いてあった名前が『田川綾子』だった事を思い出していた。その辞書は学校から支給される物で、名前が目立つように印刷されているのだ。
「…もしかして、あの辞書は」
「…ああ!あの辞書は田川さんの辞書だよ。今日の国語の授業で辞書は絶対に必要だったから」
まださっきの質問にいいのに返答してなかった、と思い出した鳥山は、改めて満へそう答えた。
「確か、窓の縁に置いたあったって言っていたけど…?」
「そうよ!部活が終わって教室へ行ったら、机の上にメモが置かれていて、それに『財布は三階の中庭の窓に置いてあります』って書いてあったの!」
確認するように聞いてきた満へ、田川は必死でそう話す。信じてもらうために、田川はさらに話し始めた。
「鞄の中を確かめたら、財布がなかったの!それで中庭へ行ったら財布が辞書と一緒に窓の縁に置いてあったの!すぐ拾おうとしたら二つとも目の前で落ちていったから、手を伸ばしてもつかめなかったのよ!!」
「本当かあ?」
「本当よ!下を見たら鳥山君が居たし、もし当たっていたら…と思ったら、心配でたまらなかったの!」
疑いの目を向けていた流に、田川はさらに真剣な顔で反論する。
「中庭へ向かっていたらいきなり腕を掴まれて『成宮さんへ辞書を落としただろ!?』って言われるし、そうしたら鳥山君が保健室へ行った、って聞いたから大急ぎで来たのよ!」
それから満からのラインを見た流の呟きを聞き、田川は大慌てで保健室へやって来た、というわけだ。
「そうなんだ。田川さん、心配させてごめん」
本気で心配していた田川へ、鳥山はそう声をかける。鳥山は、田川の話を疑ってないように見えた。
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