第10話 狙われたお嬢様 その⑩
電話を切った後、結は机の上に置いてあったメモ用紙を一枚ちぎった。
手のひらサイズのメモ用紙に結は今日の学校での行動を書き出したのだ。今日は華と一緒に居たので、だいたい把握できた。
「もし盗まれたとしたら、四時限目の間と、部活動の時ですね…。四時限目は科学の授業でしたから、科学室へ移動していましたし。華道部の部室も、他の棟にありましたから。華さんはその間財布は鞄の中に入れていましたし」
お金だけ盗めば、発見を遅らせる事ができる。華の財布は小銭入れが一緒になっているタイプだから、昼休みの時点でお札があったのか分からなかったのだ。
「その間、同じクラスの人達で遅れた人も居ませんでしたし、先に教室へ行ったとしても、単独で行った人は居なかったから、お昼前に盗まれたとしたら、同級生がである可能性は低いですね…」
部活の時に盗んだとしたら、明日教師に調べてもらえばすぐ分かる。結の高校では部活前に点呼を取るので、遅れてきた生徒を調べればいいのだ。
「他のクラスの時間割は…」
スマホを操作して、結は高校のホームページを開く。そこから一年生の全クラスの時間割を画面に出したのだ。
望ヶ丘高校は、結のクラスである普通科が2クラスあり、あとは芸術科と体育科が1クラスずつあった。この学校の生徒なら、パスワードを打ち込めば他のクラスの時間割をいつでも見られるのだ。
「4時限目、芸術科と体育科も移動教室で居なかった。この時、同じ棟の教室で授業していたのは、隣の普通科のクラスだけ…」
英語の授業だったので、教室を移動する必要はなかった。となると、隣の教室である2組の生徒が怪しい。
「…先生に調べてもらいましょう」
結は推理物が好きなので、ついこうして推理してしまう癖がある。
しかし、自分は物語に出てくる優秀な探偵ではないと自覚しているので、余計な先入観を与えないようにこの場で止めておいた。
「本当に、可愛いです…」
メモ用紙の端に描かれていた、小動物的なデザインの可愛いアニメキャラのイラストを見て、結は見とれるように笑顔で呟いた。
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