第7話 狙われたお嬢様 その⑦

 放課後、結が鞄を持って廊下を歩いていると、前の方から話し声が聞こえてきた。

 三人の女生徒達が、楽しいお喋りをしていたのだ。結からは後ろ姿しか見えなかったが、その声で真ん中の生徒は華だと分かった。

 結は自分から話しかけなかったのは、お喋りの邪魔をしてしまうと思ったからだ。そのままの状態で玄関まで歩くと、下駄箱へ行く前に華が結に気づいたのだ。

「あ!結、図書室に寄ってたの?」

「はい。華さんもこれからお帰りですか?」

「ううん、みんなでお茶をして、近くの百貨店で買い物するの。結も来る?」

「すみませんが、私はこれから塾があります。機会があれば、その時に行きますね」

 華からの誘いを、結は丁重に断った。そのやり取りを聞いた他の女学生達は、少し驚いた顔になったのだ。

「霧島さんって、塾に通っていたんだ」

「はい、この近くの『学遊塾』に通っています」

 華の右側にいた女学生へ、結はこう答えた。

「そこって、かなりレベルが高い塾だよね。霧島さんって頭いいんだ」

 左側の女学生も、結が通っている塾の事でさらに驚く。この辺りではかなり有名な塾だからだ。

「結は小学生から、その塾に通っているの。個別で教えてくれるから勉強しやすい、って言っていたわ」

 さらに説明するように、華はそう話した。もし華が話さなかったら、結はさらに説明しようとせずにそのまま終わらせていたが。

「それじゃあ結、あとでね。今度、一緒に行きましょう」

 そう言い残した華は、先に下駄箱へと歩いていった。両側の女生徒達も、華と一緒に靴を履き替えていた。

(華さん、予算は大丈夫でしょうか…?)

 昨日数万円も、間接的にお礼として渡していたところを見ていた結はついそう思ってしまった。だが、華がおねだりすれば華の両親は必ずお小遣いを渡す事を思い出したので、結は心の中ですぐ自己完結していたのだった。



「お金が無かった…、ですか!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る