第6話 狙われたお嬢様 その⑥

 華と鳥山の噂は、隣のクラスにも伝わっていた。

「鳥山君、昨日成宮さんとデートしたって本当!?」

 そのクラスの女生徒達が、出入り口の近くにいた男子生徒へそう聞いてきた。

 背が高い、少し長めのこげ茶色と、整った顔立ちが印象的な男子生徒だ。ブレザーも清潔に着こなしており、周りに好印象を与えている。

「ああ、それはデートじゃないよ。昨日、バイト先で困っていた成宮さんを助けたら、お礼に個室でお菓子をご馳走になっただけだから」

 爽やかに答えた鳥山へ、周りに居た女生徒達は「さすが鳥山君!」と絶賛の声を上げた。困っている人を必ず助けるところが、鳥山が女子から人気がある理由だ。

 そしてその女生徒達は華が鳥山とお茶した事に嫉妬するより、鳥山がお金持ちのお嬢様だからと態度を変えなかった事に絶賛していた。

 鳥山は今まで何度も誘っても、他の女生徒からの誘いは断っていたのは、アルバイトが忙しいからと知っているのもあったが。

 その会話を、教室の真ん中で聞いていた別の女生徒が耳にした瞬間、嫉妬の顔になった。

(一昨日、お茶を誘ったら断れたのに…!)

―安いチェーン店より、老舗の風格が漂う喫茶店だから、成宮華は一緒にお茶ができた。

 そう考えた、その長い黒髪の女生徒は、そんなお金さえない今の自分の状況が悔しく思ったのだ。

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