第5話 狙われたお嬢様 その⑤

 小学五年生から急に、両親が過剰な節約に目覚めて、やたらとお金を使わなくなってしまったからだ。

 なぜそうなってしまったのか、今でも分からない。それから誕生日やクリスマスのプレゼントが親からもらえなくなり、親戚からのお年玉は『貯金する』と全額没収されてしまった。

 だが中学三年生になった頃、両親は突然やたらとケチる事を止めたのだ。それまで全然なかった外食も何回かするようになり、高校も「行きたいのなら、私立でもいい」と言ってきたのだ。

 それで満は私立である希望ヶ丘高校を受けた。この高校は「すべての生徒達が、楽しい学校生活を送れる」とモットーに掲げているのだ。

 入学案内のパンプレットだけでなく、ネットでの評判を見てみたが、卒業生だけでなく在校生からも「偽りなし!」との評価を受けている。家から近い、というのもあり満はこの高校を選んだのだ。

 そして何とか合格でき、今こうして希望していた高校に通える。

まだ入学してからそんなに経っていないが、満はこの学校を選んで良かった、と思っていた。

 小学校からの親友である風山流と同じクラスになれたし、教師もまだ信頼できる大人が多い。自由な校風も、始まったばかりの満の学生生活に潤いをもたらしていた。

 あの成宮華と同じクラスになった事については、別にどうでも良かった。旅行のお土産は受け取っていたが、いずれ何らかの形でお返しをしなければならない、と考えてはいるが。

 いくら金持ちじゃないとはいえ、貰うばかりではいけない。満はどんな相手でも対等な関係でいたいのだ。

 それは結に対しても同じだ。周りは結を『成宮華の従姉妹』と見ているが、地味でおとなしい結の事を時々『華の引き立て役』だと口にしていた。

 だが満は最初から、結をそんな目で見ていなかった。今でも「霧島は霧島だろ」と、色眼鏡なしで結を見ているのだ。

 一日目の自己紹介で、結が自分から成宮家の親戚だと名乗らなかったところも満にとって良い印象となった。その後、華がその事を話したので結局クラス中に知れ渡ってしまったのだが。

 さりげなく気配りができ、困っていたらすぐ助けるために行動する。直接口に出さなかったが、満は『霧島のそんなところが良い』と思っていた。

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