第2話 狙われたお嬢様 その➁
流は華と同じクラスだと知った瞬間「これから一年間の学生生活はバラ色だ!」と叫んでいた。それほど、華と同じクラスになりたかった生徒が多かったのだ。
その理由は、華が成宮家の令嬢だというものあった。入学式の後、満達同級生はが主催した喫茶店でのパーティーに招待され、多くの同級生達が楽しんでいた、いう話があったくらいだ。
満達が住む幸澤市の名家である成宮家は、いろんな会社を経営している。ちなみにその喫茶店も、成宮グループが経営していた。
それから華は、何度も旅行でのお土産を同級生達に配ったり、とにかく気前がいいところを見せている。さらに本人は気取ったところなどなく、親しみやすい雰囲気を纏っているので女子にも人気があるのだ。
「まあ、高慢なじゃないところはまだマシかもな」
小学生時代に居た、わがままで意地悪な別の金持ちのお嬢様な同級生を思い出した満はそう呟いた。
「おはよう、みんな!」
黒板の近くの出入り口から、明るい女子の声が聞こえてきた。
その声に、流から伝わった噂によるざわめきが止まる。全員、教室へ入ってきた女生徒に注目していたのだ。
綺麗に手入れされている明るい栗毛色のロングヘア。顔立ちもまさに『美少女』と言いきれるほど整っており、肌も明るい表情を引き立てるようにきめ細かい。
モデル並みの美しさと、名家の令嬢、という気品さが見事に合わさっている。
深緑色のブレザーの制服でも、華が着ると上品な雰囲気が漂うせいか、他の女生徒達より華やかな印象を受けた。
「成宮さん!鳥山君とデートしたって本当!?」
早速数人の同級生達が、華の前まで来て質問した。不安や動揺が顔に出ていた目の前の女生徒達に、華は何か気づいたように答え始めた。
「デートじゃなくて、困っていた時に助けてくれたお礼をしただけよ。個室でその話をしていたから、そう思われたみたいね」
昨日、学校帰りに喫茶店でお茶を飲んでいた時に、入ってくるなり馴れ馴れしく声をかけてきた男子大学生に困っていたら、そこでアルバイトをしていた鳥山が、その大学生から守ってくれたのだ。
感激した華が店主に頼み、個室に案内して鳥山へお礼について話をした。それをたまたま居合わせた別の生徒達に見られたから『華が鳥山とデートしていた』と勘違いされたらしい。
「それに二人きりじゃなかったわ。結も一緒に居たんだし」
「えっ…、その人って確か…」
「成宮さんの従姉妹の…」
「おはようございます」
女生徒達が居る教室の出入り口とは逆の、後ろ側の教室の戸から静かな声が聞こえてきた。その声で挨拶しながら入ってきたのは華と対照的な黒髪の女生徒だ。
髪は肩までのセミロングで、濃い藍色の眼鏡を掛けている。どこかおとなしい感じはするが、どちらかというと真面目な印象が強い少女だ。
「あ!結、おはよう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます