霧島結は人助けのために謎を解く

嶋月聖夏

第1話 狙われたお嬢様 その➀

 現実の男の子は意地悪だと思っていた。

 だけどあの時助けてくれた子は、漫画やアニメのヒーローみたいで、カッコよかった。

 名乗らずに颯爽と去っていった、同じ年ぐらいのあの男の子を見て、霧島結は思ったのだ。

―私もあなたのように困っている人を助けられる人になりたい、と。



「満!大変だ!!」

 望ヶ丘高校の一年生の教室に、慌てて飛び込んできた茶髪の男子生徒の声が広がった。

「どうしたんだ?流」

 先に登校し、自分の席でスマホを見ていた、深緑色のブレザーの黒い短髪の男子生徒が顔を上げる。

 スマホでニュース記事を見ていたその男子生徒―満の所まで走ってきた流は『一大事!』という顔で喋り始めた。

「成宮さんが、昨日鳥山とデートしたって噂だ!」

 それを聞いた満は「それで?」という反応だった。特に興味がないという満の態度に、流はますます力説するように叫ぶ。

「新入生№1の成宮華さんが、女子の人気№1の鳥山とデートしたんだぞ!成宮さんは昨日まで、15人以上の告白を断ったのに!」

 入学式からいきなり交際を申し込まれるものの、丁寧にお断りをし続けていた華が、ついに交際を受け入れた!という事で噂が広まったのだろう。

「やっぱり成宮グループのお嬢様だから、勉強もスポーツも外見も完璧なヤツじゃないとダメだったのかな~」

 落ち込むと同時に、言い方のテンションまで下がっていく流に対し、満は今でも「特に興味がない」という反応だ。

「別にいいだろ?誰がどいつと付き合おうと自由だし」 

 お嬢様が女子人気№1のイケメンと付き合おうが、それは本人達の自由だから。そう思った満は話の間、机の上に置いていたスマホに手を伸ばした。

「でもなんか不公平じゃねえ?勉強もスポーツもできてイケメンなうえに、彼女が才色兼備なお嬢様、って」

 満の机の上に突っ伏しながら、世の中の格差を憂うように流は嘆く。流が突っ伏す前にスマホを持ち上げていた満は、まだその状態だった流へこう声をかけた。

「お前、成宮に気があるのか?」

「そりゃあ、気がないわけないだろ?美人で勉強もスポーツも得意なうえに、家がすごい金持ちだからなあ。実際、成宮さんは女子にも人気あるし」

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