第11話

「「「定期的な未来予測に深刻なエラーが発生しました。未来予測を終了します。未来予測プロセッサにより、アメジストのコードを取得。実行します」」」


 そんな声と共に、私は目覚めた。

 背中に温かくも冷たい、そんな寝汗の感触。胸の中に彼が眠っていて、それはまだコピーでは無い。

 愛くるしく寝息を吐いて、すやすやと眠っている。

 時は、午前二時といった所だろうか?

 静まり返った窓に太陽を知らない空が張ってあった。


 そんな彼を抱きしめる。逃がさぬように、また消えないように。強く強く。彼は反射的に抱き返してきて、何も知らない。

「私は何がしたいんだろう」


 そう、私は声を漏らす。

 こう感じた時、母性はどう思うだろう。ただこうして、愛していたいだけなのに。何故、何故、私は危険に身を乗り出さなければいけないのだろうか。

 普通の幸せを謳歌して、家族を作って、彼の子供を作って、育てて笑って泣いて。

 それがしたいだけなのに。

 何故? 分からない。


 鼓動を感じる。未来の技術者はどうすれば壊れなくて済むだろうか?

 私があの時、居ていれば良いのだろうか?

 ただ、正解など分からない迷宮の未来。それを覗き見る恐怖は未だに消えない。でも、最悪を知ってその中から幸せを生み出す。そうやって、を作らなければ。


 君は、眠る。何も知らないように。我々の、過去の技術に触れて。

 誰かは言いました。第四次世界大戦は石と棍棒だと。その後の発展した世界。

 再び繰り返す世界かもしれない。

 母性は言った。技術の発展を完全に止めると。

 私は言った。技術は平和を作る為の物だと。

 君は、どっちが良いのかな。


 技術の進歩した幸せな世界か。

 技術を知らない幸せな世界か。


 諸刃の剣なのは知っている。


 ...もう考えるのは止めようかな。

 疲れてしまった。

 君の顔を見ていたらどうでも良くなっちゃった。


 明日は、正確には今日。その時は楽しい楽しい海水浴。溶けかけたアイスを片手に、透き通った美しい日本海を見るんだ。お昼は味の濃い屋台料理を食べて、また遊ぶ。

 そんな幸せな海水浴時間


 私を邪魔する奴はどうすれば良い? 殺めれば良い? それも根から。種が作れぬように。根絶しなければ。


 でも、それで良いとは思っていない。

 そう眠りにつく。


「好き」

 そう彼は囁いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る