第12話 グミ食べたいけどグミ食べたくない

 アラフォーになっても未だによく食べるお菓子の一つとして、グミがある。動画サイトやSNSで異国情緒あふれるグミを食べるASMR動画が人気を博したり、キャラクターの型(モールド)を使ったグミが色々あったりと、売り場は実に華やかである。ヴィレッジ・ヴァンガードのような雑貨屋に行けば、世界各国の奇天烈なグミを安易に手に入れたりできる。そういえば最新作の仮面ライダーなどは「グミ(お菓子)」がモチーフになっているらしい。一億総グミ社会の到来である(雑)。


 だが「じゃあグミ好きなんですね♫」と言われると、意外と「そうでもない」。よく食べるので「嫌いではない」が、能動的に「好き」と答えられるほどのアレはない。


 グミ・ブームが世の中を賑わせつつあった2023年頃、おれはグミの「食感」が好きなだけで、味や形、色、パッケージなどには特に興味を示していないことが、改めて自分でわかった。


 グミというのは、ゼラチンの硬さのおかげで、一粒食べればそれなりに満足感を得ることができ、特に「甘くてガム系でないお菓子」としては、ある程度「噛んで食べた」感が得られる。実際「よく噛んで食べる」というプロセスが改めて注目されており、特に小児などにおいては味覚の発達に寄与し、ひいては脳の活性化、唾液分泌量の増加による口腔環境の改善・・・などといった研究結果もあったりするようだ。


 ガムもグミも、お菓子の中では「機能的な面」が前に出やすい。特にグミはガムと違って「食べ切れる」ため、間食時のお菓子としては手頃というのが、主に人気の理由なのだろう。ガムも味が無くなる前に飲み込んでしまう人がいたりはするが、最初からそれが目的なのであれば、グミのほうが手っ取り早い。


 そんな良い事ずくめのグミがなぜ「そうでもない」のか。


 具体的にはこうだ。最初は美味しいのでバクバク食べているが、よく噛んで食べる手前、意外に早く満腹感が訪れる。そうなるとあとは甘くて疲れるだけで、半ば義務的にグミを消費するしかなくなってしまう。少なければまだ良いが、大きいパックだと半分以上攻略するのは至難の業である。


 グミ界隈ではこの状況を考慮してか、最初からジッパーつきのパッケージという販売形態が浸透してきてはいるが、グミを開封した段階でテンションが上っていると、皿にドサーッとあけて、パッケージを廃棄したりしてしまう。これがそもそも良くないのだが、テンションが上がっているので、どうしようもない。あと、中途半端にグミを残すと固くなってしまったりするので、あんまり残したくないというのも多分にはある。


 グミ喫食にあたって一番モチベーションが高いのは「封を切った瞬間」であり、そこから先はほとんど消化試合の様相を呈する。まあ「アラフォーのおっさんがグミ痛食すんなよ」というツッコミはあるだろうし、そこは甘んじて受けよう。


 どんなお菓子でも同様のシチュエーションが考えられるが、グミの場合、解決が著しく難しいのは、グミを食べた時に得られる満腹感の強さによるものではないか、とおれは思う。

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続・保のグルメ乱文乱筆 @IS1lfFpG4lCXkbn

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