第4話 難攻不落のデニーズ要塞

 おれにとってのチェーン店というのは、基本「これを食べる」というメニューが予め決まっていて「それを食べにいく」外食店という認識である。サイゼリヤならバッファローモッツァレラとカルボナーラ、CoCo壱番屋ならチキンチーズ煮込みほうれん草1辛400g、ほっともっとなら特のりタル弁当、ねぎしなら牛たん3種盛りライト、スタバならコールドブリューのベンティ、などといった具合である。


 もちろん初めて行くお店の場合はそれなりに迷ったりもするが、例えばラーメンなら醤油かチャーシュー麺だし、洋食ならハンバーグだし、和食ならうどんセットだし、という感じで、ある程度「当たり」をつけておくことはできる。イタリアンバイキングや回転寿司など、提供される料理のジャンルがある程度把握しやすいお店の場合は、そこで供されているものから自分が好きな具材やメニューなどを選んで食べればいいだけだ。


 なので、基本的におれは「外食店で何を食べようか迷うこと」がほぼない。


 ないのだが、タイトルにも書いたように「デニーズ」だけは毎回迷う。


 デニーズが他の外食チェーンと大きく違うのは、恐らくだが「メニューの多彩さと、それに比例するクオリティの高さ」にある。デニーズには和食・洋食・中華・デザートの四大ジャンルに加えて「エスニック料理」などもあり、そしてそのどれもがそこそこハイクオリティかつ、それなりの分量でもって供される。


 デニーズであれば、醤油ラーメン(昔ながらの中華麺)とホットサンド(グリルドチーズサンド)、カレーライス(レモンライスのバターチキンカレー)、ビーフシチュー(和風ビーフシチュー)を一度に味わうことができるが、その分量はそれぞれがしっかり一人前であるので、よほど腹が減っているか胃袋に自信がある人でなければ、どれか一つに絞らざるをえない。前述のイタリアンバイキングや回転寿司などであれば分量はそれなりに少ないので数が楽しめるのだが、デニーズはそうはいかないのだ。


 それでも鍛錬(?)を重ねたおかげもあり、最近は「胡麻香る四川風担々麺セット〜鶏の唐揚げ2コ・ミニごはんつき」というメニューをようやく「当たり」として選べるようになってきたきらいはある。だがまだまだ安心はできない。デニーズはフェアメニューも毎回気合が入っており、そのたびにもんどりを打ちながらメニューとにらめっこをすることになるのだ。


 ファミレスは基本的にメニューのバリエーションが豊富だが、おれはファミレスというと「まあ肉料理がメインかな」と思っているふしはあるので、おいしそうな肉料理があれば基本的にはそれを選ぶことで事なきを得ている。ガストであれば「から好し定食(ももから揚げ4個)」などが、値段などの点で見てもスッと選びやすい。


 これはファミレス側が「基本的にどんな料理を売りにしているか」というところも関係あるのかなと思っており、ガストの場合はハンバーグなので、まあそういうことだよね、というのは割とわかりやすいのだが、デニーズはそもそも何を最大の売りにしているのかいまいちわかりにくく、しかもそのうえですべてのメニューの完成度が高いというのがあり、結果として難攻不落となっているのだ。


 気のおけない友人と「自宅の隣にチェーン店ができるとしたら何が良いか」という話をすると、デニーズはまっさきに挙がる(次点で富士そば、モスバーガー、サイゼリヤ、コメダ珈琲)。デニーズのメニューバランスはかなり神がかっていると思う。何を食べてもうまいし、それでいて飽きない。気安い定食屋のようでもあるし、レストランのようでもあるし、隠れ家的なパーラーのようでもある。


 この難攻不落のデニーズ要塞を落とせる日は来るのだろうか。

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