第16話

 解散しようとした彼女をわざわざ引き留めてまで質問した。

 明日以降のことは自分で考えるつもりだが、まもなく終わりを迎える今日くらいは正解を聞いても問題ないだろう。


「あー……」


 なぜか苦笑する天宮。

 もしかして大切なイベントとかあった感じ……?


「会話の内容は違ってますけど、いまここでこうしてること自体は一周目と同じですね。ちなみに先輩はいま立ち上がると足がもつれます」

「なにそれ」

「要するに私を巻き込んですっ転んだ結果ラッキースケベを体験することになるって話です。もうがっしり胸を揉まれちゃいますね、私」

「…………ここから一歩も動きません」


 震え上がるほどの恐ろしい未来を聞いた俺は無害を主張するために再びベンチに寝転がった。

 ラッキースケベなんかしません絶対に。

 不可抗力とか関係なくああいうのただのセクハラだからな。


「あ、そうだ先輩。怪我とかしてないんであれば明日の球技大会は参加してくださいね」

「球技大会……?」


 そういえば担任がなにか言ってた気がする。

 新しいクラスになったばかりの生徒たちが絆を深めるための、とかなんとか。

 たしか種目はドッジボール……あぁ、なるほど。

 赤嶺か青島どちらかとのイベントがあるのかもしれない。

 かといって何が起きるのか事前に知っていると妙な行動をとりかねないから、天宮は『参加しろ』と言うだけで留めたのだろう。


 願わくばさくらとヒナミが出てきませんように。

 おそらく無意味であろう祈りを胸に抱えながら、天宮が俺と十分に距離をとってから公園をあとにした。 

 

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