NTRトレーニングは初日が一番キツイ!これ、当たり前!!

 俺の身体に汗びっしょりで密着するくの一は言った。


「我慢…する…グ…ハァッ…クッ…」


 なんでだよ!? どっかいけよ!

 俺はクソ漏らし手前忍者を無視し、階段を登りきる前の所で頭だけ出して覗いた…アイカの部屋の扉は横にスライドさせるタイプのドアだ。そのドアが5センチ程開いており、中が見えてしまった…


「グプッ…ウ…あ、アイ…カ!?」


 その光景はとうてい受け入れ難いものだった。

 いつも俺達が他愛も無い事を話しているソファーで 男女は唾液を交換する深いキスをしていた…アイカと…隣にいるのはネトだった。


「グッグゥゥゥ…どうして…俺…何が…」


 何故だ…よく浮気をする女は…なんてのは対岸の火事と思っていたのに…頭の中で告白を受け入れてくれた時のアイカの笑顔がリフレインする。高校に入ってから、今までの幸せな記憶が蘇っては目の前で映像にすり替わっていく…


「カッ…ハァ…アイカァ…あいがぁ…」


 涙が…鼻水が…涎が止まらない…俺はこんな事の為に今まで頑張ってきたのか?

 16年、アイカだけを見て過ごして来た自分は何だったのか?

 「ヒロ君はだらしないから結婚してあげる♥」なんて言っていたアイカはもう死んだのか?

 俺はこれからどうやって生きていけば良いのかなぁ?俺が死ねば良いのかなぁ?


 こんなに辛い事はこれから先の人生…あるのかなぁ…


 俺は…これを乗り越えた先に光はあるのだろうか?


 胸を締め付けられ、涙で視界が定まらない俺を他所に、2人の行為は淫らに進んでいく…


 俺が触ることは愚か、見たことも無いアイカの身体を弄るネト…艶やな歓びの声をあげるアイカ…もっともっとと、貪るようにお互いを求め合う姿を見て心が死んでいくのがわかる…


 俺は何を思ったか?美しさからか、はたまた復讐か、何も考えず2人に向けて、スマホのカメラを起動した。


 2人の後ろではカノンが流れていた。

 その美しい音色は2人の勝者と、ドアの隙間から惨めに覗きスマホを向けるクズを表しているようだった。

 絵画にすればタイトルは勝者と敗者だ…






 カメラ録画のボタンを押した時にふと視界の端に尻が…また、腹痛堪え忍者がいた。


 何で俺の視界に入ってくるんだよ!ウンコ行けよテメーは!

 俺が階段ギリギリにいるのに、音を消して中腰でコソコソ、腹を抑え、チラチラこちらを見ながら2階の廊下を移動しアイカのドアの前まで行く、ドアに手をかけるウンコ漏らす5秒前の対魔忍。

 おい!そこはトイレじゃねーぞ!?やめろ馬鹿!

 おもむろに5センチ開いているドアを、更に10センチ程開けて中を覗いた。


 ビクッッとなり尻餅をつく尻の栓も雑魚い忍者。

 やっと現状を把握したらしい出来損ないくの一。 

 急いでお尻に片手を当てギュ~っと目をつぶっている…オマ、漏らしたらバレるんだからな…

 ゆっくりともんどりうち、転がりながら耐える。

 

「ハァ、ンッハァハァ…ヒロッ…ヒロォ…」


 多分少し出たクソ忍者が、アイカとは別種類のうめき声をあげながら、まさに性行為に入る前の2人と俺を交互に指をさす。片手で尻を、片手で頭を抱えながらドアの横でうずくまる。

 このクソ侮辱忍者、後で頭引っぱたいてやる。




 失礼な忍者を視界の隅にやり、ドアが少し開いたので撮影を開始する。

 俺は、 この罰を甘んじて受け入れる、だから撮影する罪を一生背負おうと思う。

 いよいよ性行為が始まった。


 パンッパンッパンッパンッパンパン


 音に合わせて2人の声は大きくなる。

 あぁ、分かった…多分、俺はこの日の為に16年間やってきたんだ。だったらやりきろう。

 そしてこの地獄が終わった時、俺は一皮むける、いや、生まれ変わると思った。


『ハッハァッ♥ねぇネト!?♥気持ちイイ!♥好き!♥大好き♥この気持ち良いの好き♥明日ヒロの前ですっごいドキドキしそう!♥』


 声を殺し泣いた…もしかしたら何か理由があるのかも?と、ネトに無理矢理なのかもと…少しでも期待していたが…どうやら彼女も望んだ事のようだ…


 俺はこの日の事を網膜に焼き付けようと思った。

 今は復讐なんて考えられない、ただ忘れるな…それだけを思い、止まらない涙を拭ってもう一度前を見た。





 ちょいクソ漏れ忍者がこちらに向けてM字開脚をしてるんだが…おい!そこは便器ってレベルじゃねーぞ!はやくきえろ!せめて帰ってこいバカ!


 だが俺の声は聞こえず、何を考えているのかわからないイカれ対魔忍者は、コスチュームの股部分はブリーフのように布が折り重なるように前開きになっている股の部分を両手を開き、秘部を俺に見せつけるように…片手を胸に押しあて…なんでだよ!

 そんなに俺が嫌いか?この外道くの一!


 スマホの画面を見る。ドアの手前にM字開脚アヘ対魔忍、その奥で俺の彼女と親友の浮気現場、俺含め登場人物は全て幼馴染。本当に…世の中の幼馴染が泣いてるよ。


 30分程の行為を断片的に撮影した後、俺は頭が回らない状態で玄関まで向かいアイカの家を出た。

 庭先を見ると俺の家とアイカの家の庭は柵や塀は無く、いつでも出入り出来るように繫がっていた…昔は俺もアイカも部屋が一階で、自由に出入りしていた。俺が気恥ずかしくなり2階に部屋を移したらアイカも2階に移したんだっけな?


『悪い事しないように、見てるからね!』


なんて言ってたな…悪い事って…なんだろうなぁアイカ…





 ぼんやりアイカの家の庭先を見ていると、カサカサカサっと乾いた音が、アイカのおじさんが大切に育てている松の樹の下の暗がり辺り聞こえた。

 どす黒い茶色の何かの上に懐紙を置いている大漁天下グソ任務完了クソ忍者。


「ヒロ…危なかった…でも、酷いよな…2人とも許せない!…」


 危なかったんじゃない、人として危ないんだお前は!

 それにアイカのおじさんはお前を許せないだろうな…


「ヒロ?…大丈夫…オレはずっと一緒にいるから…だから…樹の下は見ないで…頼む…」


 一人称が『オレ』のタツが、俺と自分の野糞について心配してきた。


「タツ…今の日本は、小学生でも1人で買い物に行く。犬や猫も決まった場所でウンコする。分かるな?」


「!?…違う!オレはタツ…じゃない…ウンチはした…認める…あ!やめて…撮らないで!…」


 排便完了ご満悦今更誤魔化し忍者の態度にムカついた俺は、証拠写真を撮り、そこからふらふらと近くの公園まで行った。






 公園のベンチに座る、頭の中を整理する…

 何故か隣に密着して坐り、俺の顔を覗き込んだり俺のスマホの画面を見たり忙しい乳首立ち忍者に言う。


「頼む、マジで1人にしてくれないか?」


 すると真顔で黙ってさえいれば、アイカにも劣らない美貌を持つタツが、マフラーで顔前面、目まで全部隠し立ち上がった。


「分かった…なんかあったら…呼んでくれ…遠慮はいらないからな…」


 当初から消えろと言っていたが、やっと言うことを聞いた…呼ばないから安心してくれ。


 俺はスマホを操作し、アイカの写真を見直す。

 卑猥に盛っていた動物2人の、ベットの枕元に飾ってあった、水族館で買ったスノードームを買った時の写真。アイカが手に持って笑ってる…

 そして、先程までの映像を見返す。もうあの家は…俺のもう一つの家という気持ちは消えた。

  それでも俺はまだ、アイカが好きなんだ、信じてるんだ。情けないない、弱いなぁ俺は…

「よし!」

 俺は決意した。これからもアイカを受け入れ続ける。アイカが自分から教えてくれるまで、俺は耐える、闘い続ける決意をした。


 だから今日、今ぐらい、1人の時ぐらい、吐き出してもいいよな?明日から頑張るからさ…

 

「あいがぁ…あいがぁ…なんでぇ…ずぎだった…ずきだったんだよぉ…あいがぁ…オエェ…オロロロ…ゲホォ…」


 悲しみが全てを吐き出そうとする。胃の中のものも吐いてしまった。

 このまま悲しみも全部出てくれば、また明日から強くなれる。









 「オベっ!?びろ!ビボ!?オェ!バッ!…ッ…ッ…!?…!?…」


ペコペコッペコッペコペコ


 俺のゲロの先にいた、先程なんかあったら呼んでくれと言っていたクールくの一が、顔に巻かれた布の一部が膨らんでは顔に張り付くを繰り返し、声を出さなくなった。


 俺はベンチ座って真下に吐いてしまった訳だが、何故か俺の足元に、居なくなった筈のタツが向かい合う様に地面に仰向けで寝ており、タツの顔面に思いっきり吐いてた。そのせいでタツも貰い吐きしたようだ…

 なんでいるんだよ!どっか行けって意味分かんないの!?


 ドロっとした俺と自分の水気で、本来は空気を通す布が、ビニール素材と変わらない密閉性を発揮し、俺の股下、ベンチの下のマフラーフルフェイスゲロ窒息忍者は、完全に呼吸を不可能にしていた…

 

 ガダンっ!バタタッ!ガダン!バタっ!


 俺の下で口部分が風船みたいにペコペコさせながら暴れまわる、ブリッジしようとしてベンチに辺りもんどりうつ…何が取り出そうと腰布に手を突っ込んだり荒縄の結び目を解いたり大騒ぎだ。

 ドラ◯もんがパニックになった時の様に、何だか分からん物が散らばる…対ゲロ忍はメンタルがクソ雑魚だから臨機応変という言葉を知らない。予定外の事が起こるとすぐ死ぬ。ファミコンゲームの主人公ばりの死にやすさだ。

 ベンチ下から脱出したものの、未だに1メートル以内でブリッジしながら首元からマフラーを取ろうとするB級映画主演女優忍者、グローブを付けてるせいで布に指が入らない。

 痙攣を始め全身から力が抜けていき、手から力が抜けていく…色んな排泄物を垂れ流し始める絶命寸前忍者。

 俺が浮気のショックで死にたくなっている前で、勝手に死因・ゲロにて目の前で死ぬ寸前の幼馴染。

 仕方なく口の所の布を取ってやる。


「ヒュホ!?フーフー…ヒロ!?怖かったぁ!死ぬかと思ったぁ…イタッ!?」


 とりあえず頭をひっぱたく。


「タツ…俺はさ、アイカとは別れない。アイカと居続ける、アイカを見続ける。良い所も、悪い所も…ただ、不貞は撮り続けるよ…復讐はしないけど俺が悪いなんて言わせない。お前はどうする?」


「ウグ…ヒロォ…もう終わらせる事は…出来ないのか?…きっと…辛いだけだぞぅ…」

 先程まで天国手前忍者のタツが這いずりながら問いかけてくる。ただ、返事は、決まっている。


「もう俺は止まらない。良いんだぞ、お前は全部忘れて無関係を装っても。」


「そうは…いかない!…ヒロが行くなら…オレも行く!ヒロが…いるところにオレは…オレ…強くなるから…もっと…もっともっと…だから…」


 相変わらず中身がスカスカの、内容のない返事をダラダラしているし、本当は今までの感じだと来ないでほしかったが、仕方ない。


「じゃあタツもこれからメンタルトレーニングだな!一緒にこの苦難を耐えきろうぜ!」


「え!?これからも…同じような事する…の!?」


 目が潤み内股でモジモジしてんじゃねーよ。








 

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