死が二人を分つまで…いえいつまでも

「うっ…ん」


孝介は、少しの脱力感と頭に感じる柔らかさを感じながら目を覚ます。


「起きた…の?こうくんよかった…」


「…鈴さん?…って!?」


孝介が目を開けると至近距離に

鈴の顔があり少しぼーと見つめた後


孝介は、今膝枕されていると気づき

慌てて起き上がるがその勢いのまま

体制を崩し頭を壁にぶつかる。


「わっ…こうくん大丈夫!?」


鈴さんは、俺がぶつけたところを優しく撫でた。


「…大丈夫」


孝介は、恥ずかしくなりぶっきらぼうに返事をした。


「あっ…ごめんなさい」


鈴さんは、それを見て何かに気づいた様に

サーと血の気の引いた顔しながら謝ってくる。


「えっ…あっいや大丈夫だよ

 ほら元気元気」


孝介は、突然元気のなくなった鈴さんに

困惑しながら、このままじゃいけないと

原因がわからないまま必死に励ます。


「…そっそうねごめんなさい」


鈴さんは、一段とテンションを下げる。


「えっと〜そっそうだ!!

 鈴さん膝枕してくれてありがとう

 ハハ…俺寝ちゃったのかな?」


何とか雰囲気を明るくしようと

話題を強引に変える。

 

あれ?逆に鈴さん落ち込んでしまった。


「…覚えてないの?」


「…えっ?」


覚えてない…?

…あっもしかして、お姉ちゃんが体を乗っ取っていた事?


「おっ覚えてないなら…その…」


「もしかして俺の体をお姉ちゃんが乗っ取った事?」


「えっ…あっ…」


なるほど鈴さんが何を考えていたのか少しわかったかもしれない。

鈴さんは、俺が心の中に

お姉ちゃんという幻想を作り上げていた事が心配…いや警戒しているのだろう。

普通に考えて俺は、精神が異常な人間なのだから


孝介は、さっきまでお姉ちゃんと話していた事や鈴さんとの会話も聞いていた事を伝えた。そうする事で少しでも理解してくれる可能性に賭けて…


「ハハごめんなさい鈴さん

 こんな非現実的な話しちゃって」


フルフルと鈴さんは、首を張り

こうくんの事を信じてると言ってくれた。


こんな荒唐無稽な話を信じてくれて、

とてつもなく嬉しい気持ちが広がる。


「でもそっか…なら、

 あの言葉も聞いていたんだね」


「あの言葉…うん聞いたよ」


鈴さんが言っているのは、

ーーわかった…私はこうくんを捨てるーー

この言葉だろう。


「…ごめんね」


鈴さんが頭を下げて謝罪する。

孝介的には、理解できた言葉だったが

鈴さんには、耐え難い行為だったのだろう。


「気にしなくて良いよ」


「そんな訳には…」


「俺はね…ホッとしたんだ

 あの言葉を聞いて」


「えっ……」


孝介は、自分の気持ちを話し始めた。

最初は、もちろんショックもあったけど

何か呪縛の様なものから解き放たれて

身体が…心が…軽くなった気持ちがした事


それに鈴さんには、

迷惑を掛けっぱなしだった事もあり

こんな事言われても当たり前だよな〜と

理解してしまった事を話した。


「だから、俺は大丈夫だから

 鈴さんも気にすることは…」


黙って聞いていた鈴さんが涙を溜めて

口を開く。


「何で……気にするよ…

 気にするに決まってるじゃない!!

 こうくんを捨てるなんて

 言うこと自体辛いし何より」


鈴さんの目から涙がこぼれる。


「こうくんとの繋がりが無くなった事が…

 辛くてたまらないのよ」


「…繋がり…」


「ねぇこうくん…こうくんは、

 何でそんなに平気なの?

 私との仲はそんなものなの?

 もう姉と弟でいられないのよ!!

 …ねぇこうくんにとって私は、何なの?」


…あぁ、そうか…

鈴さんが何を悩んでいたのか今わかった。


鈴さんは、俺との繋がりが…

姉と弟と言う強い繋がりが無くなるのが

辛かったのだ。


そんな事も俺は、気づいてあげれなかったのか…


「俺にとって鈴さんは…」


「…もういいわ」


「えっ?いや…」


「言わないで!!もうわかったから!!

 こうくんが私の事どう思っているのか

 わかったから!!」


「いや違っ」


「違わない!!

 私は、てっきりこうくんが私のこと.

 …あっいやごめんなさい」


鈴は、声を荒げた後

ハッと我にかえり謝罪する。


「ごっごめんねこうくん

 ちょっといま冷静じゃないみたい

 …頭冷やしてくるね」


そう言って鈴さんが部屋から出ようとする。

その目に涙を流しながら…


(…ダメだ…このまま行かせたら…

 ダメだ!!)


「鈴さん!!」


孝介は、部屋から出ようとした

鈴さんを後ろから抱きしめる。


「えっこうくん!?」


「行っちゃダメだ」


「…こうくん駄目だよ

 私、勘違い…」


「勘違いじゃない!!

 俺は…俺は!!鈴さんの事が好きなんだ」


「っ!…そう。

 お姉ちゃんとして嬉しいわ」


あぁダメだ伝わってない一度あんないい加減な告白をしたためだろうか?

鈴さんは、勘違いしている。

もっとちゃんと伝えないと伝わらない。


「違う!!そうじゃない

 俺は、鈴さんの事を姉ではない

 一人の女性として好きだ!!」


「っ!」


「前告白した時…あの時は、ごめん

 姉を繋ぎ止めたい

 と言う気持ちもあった…けど

 今は、鈴さん貴女自身が好きだ!!」


「………」


「俺は、ずっと姉と弟の関係が壊れるのが

 怖かった。

 でも今は、壊れても…壊れてもいいから、

 俺は、鈴さん貴女を愛したい」


孝介は、今思っている事を伝え

そして、鈴を強く抱きしめる。

鈴は、数秒沈黙した後に


「…本当に私でいいの?」


「鈴さんじゃなきゃ嫌だ」


「私…嫉妬深いし重いよ」


「俺の事好きでいてくれてる証拠だよ」


「私……お姉ちゃんで…こうくんの事捨てた

 ひどい人間だよ」


「それなら俺は、

 自分の中にお姉ちゃんを

 作り上げたヤバい人間だよ」


「…そんな」


「ねぇ鈴さん返事を聞きたい」


「…後悔しない?」


「うん」


抱きしめる力を緩めると鈴さんがこちらを振り返るそして…


「私は、孝介くんあなたのことが好きです。

 弟としてではなく一人の男性として」


「それって…俺と付き合ってくれるって事?」


「うん未来永劫、死が2人を分つまで

 …いえ来世もその次もずーと一緒」


「えっ…あっはい」


予想以上に重い言葉が来て孝介は、

少し引いてしまう。


「…嫌なの?」


「いえ!嬉しいです!!」


「…よかった!孝介くん好き♡」


そう言って、

鈴は、孝介に抱きつく

もしかしたら、大変な人を好きになってしまったのかもしれない。

まぁ後悔はしないが…


「…俺も好きですよ…鈴さん」


「…孝介くん私もよ」


「…鈴さん」


そして、思い出の家で姉と弟ではなく

一人の男女として、

二人は甘いキスをした。

 

 







こんにちは、作者です。

まずここまで読んでいただいた皆様に感謝を申し上げます。

さて次回最終回となります。

最後まで頑張りますのでよろしければお読みいただけると嬉しいです。

 

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