こうくんに幸あれ

『…えっ?こうくん今…』


「うん…仕方ないね」


『なっ何で!?

 彼女は、私と違ってこうくんを捨てたのよ!!』


お姉ちゃんは、理解できないと声を出す。


「うーんだって、再会したあの日から、

 ずーと鈴さんには、迷惑かけてるし

 見捨てられても仕方ないかな〜って」


『…それじゃこうくん一人になっちゃうよ?』


「ハハ…そうかもね」


お姉ちゃんは、困惑していて、何を言えばいいか戸惑ってる様だった。

まぁそれも当然といえば当然か…

孝介が苦笑いをする。


孝介としては、鈴の言葉に動揺してはいるが今まで迷惑をいっぱいかけてる事もあり、

まぁそうだろうな〜と理解できたし、


逆に何かに呪縛の様なものから解き放たれた感覚と清々しい気持ちを感じていた。


『でもこうくん、わた…じゃなくて彼女の事

 …その好きなんでしょ?違う…の?』


「うんそうだよ、

 俺は、鈴さんの事が好きだよ」


『じゃじゃあ…』


「だからこそ、鈴さんが考えて出した結論も

 受け入れるよ。」


『それじゃこうくんは、諦めるの?』


「ん?…あぁ違う違う諦めるつもりは無いよ

 まぁ鈴さんから、避けられるかもしれないし嫌われてるかも

 …それでも好きだから俺は、諦めない」


俺は、鈴さんの事が好きだ

この気持ちは、揺らぐことはないだろう。


『そう……そうなのね

 …強くなったねこうくん』


お姉ちゃんは、頭を優しく撫でる。


「そっそう?」


『ふふ…照れちゃって』


照れて顔を背けてる孝介を見て

お姉ちゃんは、くすくすと笑う。


『…本当によかった』


ピシッ

「…ん?」


孝介は、一瞬何か違和感を感じた。


『………時間切れ』


お姉ちゃんの方を見ると何処か悲しそうな顔をしている。


「時間切れ…?」


『うん…こうくんは、目覚めないといけないからね』


フー…と一つため息をついた後

お姉ちゃんは、正座になり足をポンポンする。


『はいこうくん、膝枕』


「え?なん『お願い』…うん」


孝介は、何か縋る様なお姉ちゃんを

見て断る事ができず

お姉ちゃんの足に頭をのせる。


『ねぇ…こうくん?』


「何?…お姉ちゃん」


『幸せになってね』


お姉ちゃんは、孝介の頭を優しく撫でる。

 

『これからも生きていく限り、

 落ち込んだり傷つくこともあると思う

 だけどね、絶対良いことも起こるから

 幸せになれるんだから』


「…うん、ありがとうお姉ちゃん」


二人だけの世界は、

淡い光に飲み込まれていく

孝介は、急激な眠気に襲われる。


『眠たいんだよね大丈夫だよ〜

 ゆっくり目を閉じてそしたら、

 この夢から覚めるから』


「……お姉ちゃん」


『ん?…どうしたの?』


「俺…お姉ちゃんに

 出会えて…幸せ…だったよ

 あり…がと」


『っ!……うん、

 こちらこそこうくんのお姉ちゃんになれて嬉しかったよ』


お姉ちゃんは、とても可愛らしくそして美しく笑ったその目に涙を流しながら…


その光景を最後に孝介は、目を閉じる。


『こうくん愛しているわ

 いつまでも…お姉ちゃんとして』


そう言った後お姉ちゃんは、光の中に消えていった。



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