幻想のお姉ちゃん

「ん…ここは…」


孝介は、不思議な感覚を覚え目を開く

周りを見てみると白い不思議な景色が広がっていた。


「あれ…?確かお母さんと話して…」


『だーれだ?』


そう突然、手で目を覆われる。


「へっ!?…えっ…と……お姉ちゃん?」


『ふふ、正解!!』


そう声が聞こえて、視界が明るくなる。

すると目の前には、

小学生高学年ぐらいの女の子…いや

記憶の中のお姉ちゃんが立っていた。


『お姉ちゃんだよ♪

 こんにちは、こうくん』


お姉ちゃんは、そう笑顔を見せた後

勢いよく抱きついてきた。


孝介は、それを受け止めつつ

この状況に困惑していた。


(何でお姉ちゃんがって、お姉ちゃん?

 いや俺は知ってる…そうだお姉ちゃんだ)


孝介は、記憶の蓋が外されたように

目の前にいるお姉ちゃんとの記憶が次々と思い出されてくる。


(それにしてもここは、何処?)


『ここは、こうくんの心の中だよ』


周り

(えっなっ何で!?言葉に出してないのに?)


『ふふ…それは、お姉ちゃんだから』


「お姉ちゃんだから!?」


『そうだよ〜、私は、こうくんのことなら

 何でもわかるんだから…

 た・と・え・ばこうくんが最近買った

 ドキ⭐︎お姉ちゃんと「ちょっとまったー!!」ん?…どうしたの?』


孝介は、勢いよくスライディング土下座する。まずい…俺の個人情報が筒抜けだ!!


「…勘弁してください」


『えぇー…どうしようかな〜』


そう言って、お姉ちゃんは、

楽しそうに体を揺らす。


「本当お願い…お姉ちゃん」


『…うーん仕方ないな〜わかった

 こうくんのお願いだもんね⭐︎』


         ・

         ・

         ・


「…それで、ここが心の中だってわかったけど何で俺は、ここにいるの?」


俺は、真っ白い空間の中にお姉ちゃんと隣り合わせに座っている。


『それは、こうくんが一番わかっているはずだよ』


「俺が?」


『うん、こうくんは、今日何しに来たの?』


お姉ちゃんが手を振ると

目の前の白い空間に、一つの家が出てくる。

その家は、家族四人で暮らしていた

思い出深いあの家だった。


その家を見ながら孝介は、ポツリと言う。


「俺は…変わりたくて…

 過去のトラウマから立ち直って、

 そして…鈴さんに…」


『私に?』


「あっ…お姉ちゃんじゃなくて…その…」


『ふふ…ごめんねわかってる』


お姉ちゃんがくすくすと笑う。


『…でもこうくん

 本当にそれでいいの?

 一人になっちゃうよ』


お姉ちゃんが心配そうこちらを見る。


「大丈夫だよ…俺は、幸せな事に周りの人に恵まれてるから、一人じゃない」


『ううん…こうくんは、一人だよ』


そう言うとお姉ちゃんは、手を振る。

すると景色が部屋の中に変わり、

そこには…鈴さんの姿があった。


「これ…は?」


『今、私と彼女が話してるの』


「話すってどうやって?」


『私がこうくんの体を使って』


孝介は、その言葉に驚きお姉ちゃんの方を振り向く。


「俺の!?……えっ!?

 つまり今、俺…体を乗っ取られてるって事!?」


『そうだよ〜』


「えー…そうだよ〜って、そんな…」


あまりにも気の抜けた返事に、

孝介は、頭を抱える。


そんな孝介の背中を叩きながら、

お姉ちゃんは、

『もう、そんな事どうでもいいじゃん

 それより、ほらっ大事な言葉聞き逃すよ』

と孝介を促す。


孝介は、その言葉に渋々従い

目の前の光景を見つめる。


するとちょうど、それまで何か考えていた

鈴が口を開く。


「わかった…私は」


(わかった?鈴さんは、何を言おうと…)


「こうくんを捨てる」




「えっ……」


ドクンと胸が跳ね上がる。 

いっ…今…鈴さんは、なんて…言った?


『…あぁ〜あ…言っちゃった。

 残念だったね、こうくん…彼女は、こうくんを捨てるんだって』


「………」


『酷いよね…お母さんにも捨てられ…

 姉にも…捨てられてこうくん可愛そう…』


お姉ちゃんは、孝介を抱きしめる。


『でも、大丈夫だよ

 私は、ずっと側にいるから……ん?』


お姉ちゃんは、

あまりにも返事が来ない事に不思議に思い

孝介に呼びかける。


『こうくん?』





「…仕方ない…か…」


『……え?』

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