こうくんに姉は、いらない 【鈴?視点】

『お姉ちゃん』


いつからだろう…

…私が私になったのは…


私は、気づいた時には、

こうくんの側にいて…


そしてこうくんは、

いつも私に話しかけて来てくれた。


「お姉ちゃん!!今日学校でね…」


『………』


「お姉ちゃん見て!!

 テスト今日100点取ったよ!!」


『………』


「お姉ちゃんお姉ちゃん」


『………』


こうくんは、それはもう嬉しそうな顔で

喋っている。


そんなこうくんの話を私は、

ニコニコと微笑みながら聞いていた。

いや…それしか出来なかった。


だけど…それでいい

目の前にいる男の子が幸せなら…





ザァーザァー

その日は、雨が酷い日だった…

こうくんは、部屋の外をぼーと見ている。


「…僕は…捨てられてない…ただ理由があって側にいられないだけなんだ…」


こうくんが歯を食い縛る。

こうくんの今日の記憶が私に入り込んでくる。

         ・

         ・

         ・


『お前、家族に捨てられたってな』


『違う!!』


『嘘だね、周りみんな言ってるよ

 家族に捨てられて、独りぼっちのくせに』


『違う!!違う!!』


こうくんは、校舎の裏

数人の子供に囲まれていた。


『お前気持ち悪いんだよ、

 日菜先輩にベタベタして、

 日菜姉日菜姉って、

 先輩は、お前の姉じゃないんだよ!!』


『そーだそーだ!!』


『………』


『何とか言えよ、

 それともお姉ちゃんって、助けでも呼ぶか

 ギャハハ』


ドン!!とこうくんが押されて地面に倒れる。

その光景を見て他の奴らも笑う

 

『こらー!!

 何やってるの!!』


『ヤバっ先生だおい行くぞ!!』


そう言って、そいつらは、

こうくんを置いて逃げて行った。


『僕は…捨てられて…ない』


         ・

         ・

         ・

「…そうだ僕は、捨てられてない」


こうくんが悲しそうにしている。

それを私は、ただ見ていることしかできない。その事に憤りを感じる。


「そうだ…証明してやる」


こうくんは、そう言ってふらりと立ち上がり

部屋にロープをくくりつける。


その瞬間私は、こうくんが何をしようとしているのか理解した。


「……!!………!!」

(あっ…だっだめッ!!

 だめだからやめてッッ!!)


私は、必死にこうくんを止めようと声を出すが身体が動かず声も届かない。


(だっ誰か誰かこうくんを止めて)


必死に周りに伝えようとするが

当然聞こえるわけがない。


そうしてる間にも

こうくんは、椅子に立ち首にロープを…


(だっ誰か…あっああ

 こうくん…ダメッーー!!)


私は、必死に手を伸ばす。

どうかこうくんを助けてくださいそう願いながら、すると…

「えっ…?」


ドスンッッ!!

こうくんが何かに押され

後ろに倒れ床に体を打ち付ける。


「グッ…!なっ何?」


こうくんは、何が何だかわからず困惑していた。

もしかして、私が救えたの?

こうくんを…って、


『ごっごめんこうくん!!大丈夫!?』


私は、倒れてるこうくんに話しかける。


「えっ…?お姉ちゃん?」


『怪我ない!?』


「う…うん」


ほっ…どうやら本当に怪我はないようだ。


『よかった………あれ?』


そこで私は、違和感を感じる。

私の声がこうくんに伝わってるのだ


『私の声聞こえてる?』


「うん」


どうやら、私はこうくんと会話出来る様になった様だ。

私が少し困惑していると

こうくんが涙を流しながらこちらを見る。


「ッ……お姉ちゃん…お姉ちゃん〜!!」

……ビタン!!


『こっこうくん!?』


こうくんが抱きつこうとして、

私をすり抜けて床に倒れ込み顔をぶつける。


「えへへ、お姉ちゃん…お姉ちゃんが喋った」


こうくんは、起き上がりこちらを嬉しそうに笑っている。



『……フフこうくんったら』


あぁよかった…こうくんを助けられて、

 …神様ありがとうございます。

私に、こうくんを

  救える力を…祝福をくれて、

私は、心から感謝した。






でも…私は、気づいていなかったのだ…


「…はは…やった、

 僕は、証明できたんだ…」


これは、断じて祝福なのではなく

 呪いだと言うことを…

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