二人のお姉ちゃん

「うん?誰って孝介だけど

 あはは、何の冗談?」


「………」


「…もう、そう黙っていられちゃ困るわ」


孝介がため息をつくと

鈴は、重い口を開いた。


「…お姉ちゃん」


「……へぇ」


「私自身何を言ってるのかわからないけど

 貴方、こうくんが作り出した。

 …私じゃないの?」


「フッ……ハハハ!!何その冗談

 そんなファンタジーじゃあるまいし…」


「…お母さんが話している途中で何か

 こうくんの様子が変わった感じがして、

 何より、自分の事僕呼びしていたから」


「ふーん、…及第点ね」


孝介は、鈴から少し距離をとり、

手を胸に添えてお辞儀をする。


「初めまして、

 私の名前は、

 こうくんのお姉ちゃんよ」


そう言って、ニヤリと笑った。





「木沢…鈴」


「そう…こうくん自分を守る為に

 絶望の底でこうくんが作り出したのが私」


「こうくん………はっ!

 こうくんはこうくんは、どうしたの!?」


「うん?あぁ寝ているよ

 いつもこうくんの体を借りるとこうなるのよね〜」


「いつもって…」


「あっ勘違いしないでね、

 私が体を乗っ取るのは、

 特別な時だけ」


「特別って、その体はこうくんのものよ!!」


孝介は、頭を抱える。

「はぁ…現実の私ってもうちょっと

 頭がいいと思っていたけど

 違ったみたいね…ショック」


「…ふざけないで」


「あら…そんなに怒らないで姉さん」


「ッ!」


「フフやっぱり、

 こうくんには、甘いのね、

 あぁそう睨まないで……虫唾が走るから」


孝介…いやお姉ちゃんは、

そう言いながら、階段を使い2階に上がっていき孝介の部屋に入る。


「ちょっと!」


鈴もその後を急いで追いかけるとそこには、

カッターを手首に当てた孝介の姿が


「なっやめて!!」


鈴は、孝介に近づきカッターを取り上げる。

その様子を見てニヤニヤと笑う。


「何をやろうとしたの!!」


「何をって、私がこうくんの体を

 乗っ取って止めなければ

 こうくんがしていた事」


「なっ…何を…」


「あぁ後は、首吊り、飛び降り、車道に…と

 か色々」


それを聞いて、

鈴は、体中から血の気が引いた。


目の前の幻想の私の言う通りだとしたら、

こうくんは、何度も死のうとしたのだ。


「そんな!!信じられない…

 だって、そんな事誰からも聞いて…ない」


「フフそりゃそうよ、気づくわけないわ

 私が全て止めてたんだから」


「それで、わかったかしら?

 私の存在意義を…

 私を消すと言う意味を」


「そっそれは…」


鈴は、理解した。

幻想の私は、こうくんの最後の防波堤なのだと…そして、それを無くすと言う事も


「…フフ、まぁこんな事言ってるけど

 私、消える事自体は、

 何とも思っていないの

 だからね……取引しましょう」


「…取引?」


「えぇ…私?

 

 

 



 


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