孝介のお姉ちゃん

「そんな……いや…うそよ

 こうくんが私達を…私を…」


鈴は、寧々から聞かされた話しを信じる事ができなかった。


鈴にとって、

母は、孝介を見捨てた冷酷な人と思っていた。

だがそれは、孝介の事を思った行動だった事


そして何より、

こうくんが私達じゃなく幻想の家族…いや姉を選んだんだと言うことの方がショックだった。


もちろん、こうくんがずっと姉を想い続けてくれるなんて事は、

都合の良い妄想だとわかっている。

…それでも…


「私は、信じない…信じないわ!!

 どうせお母さんの…「落ち着いて」」


「…こうくん?」


興奮する鈴を孝介が嗜める。


「お母さんの言ってる事は、

 全部本当だよ、

 は、家族を捨てたの立ち直る為にね」


「そんな悲しそうな声出さないでよ…」


孝介は、苦笑しながら頬っぺたをかく。

そんな様子を見ていた寧々は、

頭を下げる。


「…ごめんなさい」


「お母さん…何で謝るの?」


「孝介くんがそんな選択したのは、

 私のせいだから私がもっと

 しっかりしていれば

 本当にごめんなさい」


そう言って、寧々は、頭を下げる。

その様子を見た孝介は、

ため息をついて、優しく語りかける。


「お母さん…謝る必要はないよ

 僕は、お母さんの事は許してるんだから」


「えっ……」


寧々は、伏せていた顔を上げる。


「あの時は、あんな風に言ったけど正直

 本当は、寂しかったし辛かった。」


「…うん」


「だけどお母さんは、あの日から、

 ちょくちょく会いに来てくれていたし、

 色々サポートもしてくれたでしょ?

 それに僕は、救われたし感謝してる

 だからこれ以上気にしないで

 ありがとうねお母さん」


「あっ……こ…すけくん」


寧々は、体を震わせながら涙を零す。

そんな寧々に孝介は、

笑顔で近づき寧々が落ち着くまで寄り添った。


「ッ……」


         ・

         ・

         ・

「…ごめんね、もう少し居たかったんだけど」


寧々は、靴を履きながら申し訳なさそうに謝る。


「ううん、用事じゃ仕方ないもん

 …でも、そうだね今度時間とって会おうお母さん」


「…いいの?」


「もちろん!

 あっ!もしよければ今のお母さんの

 結婚相手の方にも、挨拶したいな?」


「えっ……わかったわ

 …ありがとう…孝介くん」


「うん…って!もう時間じゃない?」


「あっそうね……それじゃまたね孝介くん

 …それと日菜」


「うん!またね!!」


「…えぇまた…」


寧々は、挨拶してから家を出て行った。


バタン

「…行っちゃったね?」


「………えぇ」


「…さて!

 これからどうする?」


「………」


「まだ時間はあるし、

 家の探索再開しても良いし、

 何処か別の場所に行っても良い…」


「………」


「う〜ん…って、

 どうしたの?」


鈴からの返事が来ないことに違和感を感じて

鈴を見る。


「………」


「鈴さん?」


「……貴方は……誰?」






孝介は、少し固まった後

……ニヤリと口角を上げた。




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