寧々の過去 ⑤ 【寧々視点】

「そうね…寧々貴方は…

 


「えっ……うん…」


…何を勘違いしてたのだろう

私には、

孝介くんに近づく資格なんてないのに、


「わかってるわ

 私は、孝介くんにとって、

 害にしかならないもの…安心して」


私は、立ち上がる

…帰ろう…


「寧々?ちょっとまだ…」


「詩織、孝介くんの事

 よろしくお願いします。

 私は、孝介くんに近付きません」


寧々は、詩織に頭を下げて話しを終わらせようとする。


「ちょっともう!!

 最後まで話しを聞きなさい!!

 寧々貴方は、子供じゃないんだから!!」


「ビクッ…ごめんなさい」


詩織に叱られてハッとする。

…いけないまたやってしまった。


最近私は、

自分でも気づかないうちに

何も考えず行動してしまうことがある。


「…寧々とりあえず座りなさい」


「…はい」


「それとごめんなさいシスター」


「えぇ大丈夫よ

 ちょっと飲み物取ってくるわね」


シスターは、

そう言って部屋から出て行き

部屋には、詩織と私二人っきりになった。

 

「ふぅ…さて、

 話しを続けていいかしら」


「えぇ…ごめんなさい」


「それじゃ寧々、

 貴方が何故、孝介くんに近づいたら、

 ダメかわかる?」

 

「それは、私が孝介に悪影響を与えるから…」


「簡単に言うとそうだけど、

 今、寧々が考えてるような

 私のせいで孝介くんが…

 とかじゃないからね」


「えっ…?」


「はぁ…やっぱり勘違いしてた

 …まぁ私の言い方も悪かったけど」


詩織は、そう言いながら説明してくれた。


ついさっき聞いたように今の孝介くんは、

トラウマを和らげる為に色々な治療をしているらしい。

その過程で私に会ってしまうと

治療が逆効果になってしまう可能性があるらしい。


「まぁ、今みたいなトラウマから、

 物理的精神的に遠ざける治療法

 孝介くんに本当はしたくないけど

 寧々は、ずっと孝介の側に居られないでしょ?」


「…うん」


「だから、孝介くんの症状が和らいで

 私が大丈夫と判断するまで

 会わせるわけにはいけないのよ

 理解してくれた?」


「わかったわ」


「うん、それじゃもう一つ、

 寧々、貴女自身の事よ」


「…私がおかしくなっている事ね」


「…気づいてたの?」


「私自身の事だもの…」


気づかないはずがない、

一日中、何もする気が起きなくて

気づいたら夜になったり、

理性が働かずに直情的な行動とってしまう。


「こんな状態の私じゃ

 孝介くんに会っても碌なことにならないわよね」


「…そうね、それに鈴ちゃんに取っても」


えっ……?

…あっ…そう…そう

鈴…鈴、私の大切なもう一人の娘

あれ?鈴は、あれ?記憶がない、

私は…鈴の事忘れて…私は!!


ガタガタと体が震え出す。


「しっ詩織…わたし、娘を…鈴を…」


詩織は、寧々を抱き締める。

「大丈夫、忘れてない

 寧々は、目の前の事を頑張りすぎただけ」


「でもっでも!!」


「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて」


詩織は、寧々が落ち着くまで抱きしめ慰め続けた。




「…落ち着いた?」


「…うんありがとう」


そう言って寧々は、詩織から離れようとするが詩織は、力を緩めず逆に力強く抱きしめる。


「…あの詩織?

 もう大丈夫よありがとう離れて?」


「いやもう少し」


私は、詩織を引き剥がそうとするが

一向に離れようとしない。


「いーやー!!私だいぶ頑張ったじゃない

 だからもう少し抱きつかせて〜!!」


「いい歳した大人が何言ってんの?」


「心は、18…いや16歳だからいいの〜」


「そんなわけないでしょ」


「そう?」


「そうよ…ふふ」


「笑った」


「えっ?」


「やっぱり寧々には、笑顔が似合うよ」


「…ありがとう…ふふ」


二人して笑い合う。

あぁ…こんなにも笑ったのは、

いつぶりだろうか…


ありがとう詩織

胸の奥が暖かくなり、気力が湧き上がってくる。


「ねぇ詩織、

 私にお医者さん紹介してくれる?」


「えっ?それって」


「わかってる自分の心がおかしいって事

 だから変わりたい

 そして、ちゃんと子供達と向き合いたいの」


「寧々……うん、任せて!!

 寧々が住んでる近くで

 ちゃんと腕利きの精神科医の先生紹介するね。」


「うん詩織よろしくお願いします。」


私は、決意を固めた。


「よし、それじゃ善は急げ

 早速調べてくるね」


「いやいや、詩織、

 シスターさんがお茶準備してくれてるんじゃないの?」


「あっ!!そうだった……あれ?

 でも、それにしては遅いね」


確かにシスターが部屋から出て行って、

だいぶ経っている。


「そうね、ちょっと確認」


そう言った所でちょうどよく扉が開くそちらを向くと

「あっシスターちょうど話してたっ…」


そこには、孝介くんが立っていた。

「あっお母さん!!」

 

「孝介くん!?」









 


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