寧々の過去 ①【寧々視点】

【数年前】


「…孝介くん…孝介くん」


私は、ぶつぶつと譫言うわごとの様に呟きながら、ふらふらと歩いている。


この時の私は、

愛する人の死から、立ち直れないまま

孝介くんとの別れ両親からの悪意など

精神的に追い詰められており、


両親から、孝介くんに近づけと言う命令に、

ただただ孝介くんを守らないといけない

と言う気持ちだけで何も考えられずに、

短絡的に、孝介くんの元に向かっていた。


「…どうすればいいの…

 どうすれば、孝介くんを守れるの?

 …どうすれッ…?」


ふと何処からか、

何かを呼ぶ声が聞こえる。


「…何かしら?」


その声の方向に近づくとそこには、

「…詩織?」


「えっ?…もしかして寧々?」


詩織が何処か焦った様子で周りを見渡していた。


「寧々どうしたのその姿…

 あっそれより孝介くん見なかった?」


ドクンと心臓が跳ねる。

「こっ孝介くんに何かあったの!?」


「いっ痛い、ちょっと落ち着いて寧々」


「落ち着ける訳ないでしょ!!

 孝介くんが孝介くんがどうしたの!?」


「ちょっと!?本当に落ち着いて、

 そしたら話すから」


私は、渋々詩織から離れる。


詩織は、少しホッとした表情をした後に

話し始めた。


今日、詩織の子供の日菜ちゃんが

孝介くんの元に遊びに行ったらしい、

途中までは、一緒に遊んでいたらしいが

トイレに行ってる間にいなくなったらしい


最初は、家の中を探していたらしいが

靴がない事に気づき詩織に連絡してきたらしい。


それって、私の顔から血の気が引いて行く。

孝介くんがいなくなった。


あぁ私のせいだ私が孝介くんを見捨てたから、私が私が!!


「寧々!!」


「えっ?…あっ」


「大丈夫?」


スマホを持った詩織がこちらを心配そうに

見ている。


「大丈夫…よ、

 それより何か連絡が来たの?」


「えっあぁ喫茶店の常連さんが駅の方で

 孝介くんを見たって人がいたらしい。」


「…駅」


「そう、不味いわね

 …もし孝介くんが電車に乗ってしまっていたら、目的地がわからない限り追うのが難しいわね」


目的地……もしかしたら、

私は、踵を返して走り出す。


「えっ寧々!?ちょっと何処行くの!!」


「孝介くん…孝介くん!!」


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