母と姉と弟と

【???視点】

『…と言う事で申し訳ないけどよろしくね』


「ええ、此方こそ本当は、お礼を

 言わなければいけないのに、

 …うんそれじゃまた今度会いましょう」


ピッと電話を切る。

切られた画面には、詩織の名前が出ていた。


「…さぁ行きましょうか」


私は、家に向かい歩いて行く。


詩織には、お礼を言っても言い切れない。


もし、お義父さんや詩織の協力がなければ、

家を守り続ける事が出来なかっただろう。


(この家は、孝介くんに渡すまでは、

 必ず守らなきゃ)


目の前の家を見て、そう改めて心に誓う。


カチャカチャ…ガチャ

玄関の扉を開ける。

さて最初は、あの人の……え?


扉の先には、見慣れない靴が二足並べられていた。


どっどう言う事、

この家には、人がいるはずがないのに…!?


私がそう困惑してると二階の方から物音が聞こえ階段から人が降りてくる。

その姿は…


「…孝介くん…鈴」


「……お母さん」


愛する子供達だった。




【孝介視点】

「…何であなた達がここに?」


目の前のお母さん事、

寧々さんが困惑しながらこちらに質問してくる。


孝介自身、詩織さんが来ると思っていたのに、まさかお母さんがいた事で混乱して、

上手く言葉が出ない。


「それは、こっちのセリフよ!

 何であなたがここにいるの!?」


後ろから階段を降りて来ていた。

鈴さんが代わりに答える。


「ッ…それは…」


「家族を捨てたあなたが何故ここにいるのかって聞いてるの!?

 …答えられないの?」


「わっ私は、家族を…捨てた訳…じゃ」


鈴さんがお母さんに詰め寄る。


「ちょっと鈴さん落ち着いて!!」


「落ち着ける訳ないでしょ!?

 よくもこうくんの前に」


「俺は、大丈夫だから!!

 それに、お母さんとは、

 あれから何度か会ってるから」


その言葉を聞いて、

鈴さんが固まり困惑した表情でこちらを見る。


「落ち着いて…ね?

 一旦お茶でも飲んで落ち着こう。」


「えっでも…こうくん平気なの?」


「いや、まぁ平気か?と言えば嘘になるけど

 鈴さん見てると妙に落ち着いたから」


激昂している鈴さんが俺より、

凄かったので、

自分の困惑は、吹っ飛んでしまって、

今は、ただ鈴さんを止めないと言う気持ちしかなかった。


「それで、…お母さんもいい?」


俺は、お母さんの方を向いて聞くと

「…えぇ」と返事が返ってきたので、

三人は、玄関からリビングに移動した。

 

 

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