思い出の場所と思い出の人

「懐かしい…ね」


「うん…」


目の前には、

…家族で暮らしていた

思い出の家が建っていた。


…不思議とその場所は、あの日から時間が

止まったかの様な感覚を覚える。


「…入ろっか?」


「…うん」


孝介は、ポケットから鍵を取り出し

玄関を開ける。


「うっ…」


玄関から見える家の中は、

あの日から、何にも変わっていなかった。


「…こうくん」


「…入ろう」


一瞬怯んでしまったが、

意を決して家の中に入りリビングに向かう。

リビングは、当然だがあの日と全然変わってなかった。


「懐かしい、ここで家族全員で

 テレビ見たり映画見たりしてたね。」


「フフそうね、

 こうくんたら、ホラー見る時も

 家族でいたら怖くないって、

 私に抱きつきながら一緒に居たものね」


「なっ!そっそんな事!?

 何で鈴さんそんな事まで覚えてるの?」


「フフ、こうくんの事なら、

 なんでも覚えているわよ」


そう言って鈴さんは、笑っていたが何かに気付いたのか首を傾げる。


「うん?どうしたの鈴さん」


「いえ…何というか部屋が異様に綺麗だなって思って」


あぁ鈴さんは、空き家のここがあまりにも綺麗だと言う事に気づいたのだろう。


「それは、爺ちゃんや詩織さんとかが

 時々来て掃除してくれていたみたいだよ

 この鍵も詩織さんから貰ったものだから」


「そうなの…でも、これって」


鈴さんは、何かまだ納得していない様だった。


「鈴さん、次二階に行って見ない?」


「えっ…ええ行きましょう」


二人は、二階へと上がる。

二階は、俺や鈴さんの部屋などがあった場所だ。


「それじゃ自分の部屋見て見ましょうか」


「うん、じゃ私も自分の部屋を見てみるわ」


「わかりました」


孝介は、ガチャと扉を開けて部屋に入る。


その部屋は、昔と変わらなかった。

昔集めてた漫画やおもちゃなどが飾られていた。


「ハァ〜懐かしい」


「そうだね」


えっと振り返ると鈴さんが立っていた。


「鈴さん?自分の部屋に行ったんじゃ」


「あぁ…私の部屋は、

 その…ほとんど引っ越した時に持って行ったからあまり見る物もなくて」


そう気まずそうに鈴さん呟いた。


「あっそれより、こうくんの部屋は、

 物が残っているね」


「うん俺は、あまり持っていかなかったからね」


…だってあの時は、家族が一緒にまた暮らせると信じていたから。


「そうなんだ…ん?」


「どうしたの鈴さん?」


「いえ今、玄関の方から音が聞こえた気がしたんだけど」


「えっ?この家に誰も来るはずが

 …あっ!もしかして詩織さんが来たのかな

 詩織さんは、今日来る事を知ってるから」


「……こうくん行きましょう」


「ん?うっ…うん」


何故か顔が険しい鈴さんの後をついて行きながら、玄関へと向かった。



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