思い出の場所
「こうくん…こうくん?」
「えっ!どうしたの?」
「何度もこうくんを呼んだんだけど
返事がなくて」
「そっそうだったのごめん」
「ううん、それより大丈夫?
木曜日から、様子が変よ?」
「うっ…」
あの日、鈴さんへの恋心を
改めて認識したあの日から、
どうしても、鈴さんを意識してしまっていた。
「もしかして、今日行きたくない?」
「えっ…あっいやそんな事ないよ」
「本当?辛かったら言ってね?」
「うん」
そう言って、孝介と鈴は、
電車からとある駅に降り立つ、
今日は、土曜日であり、
あの場所に行く日である。
正直あまり緊張もしていない。
もっと具合が悪くなったりするもんだと思っていた。
何故なら今から行く場所は、
逃れることができなかった
トラウマの最たる場所だからだ。
実際今まで何度か行こうとしたが、
向かって行く途中で気持ち悪くなったり、
酷い時は、頭に浮かんだだけで、
過呼吸をおこしていた。
だが今は、そんな事もない
もしかしたら、トラウマも治ってるのかも…
「こうくん大丈夫?」
「えっ何が?」
「その…手」
鈴さんに言われて、自分の手を見ると
その手は、ガクガクと震えていた。
「あっあれ?」
何で手が震えているのだろう…?
あれ何故か体全体が震え始めて
寒気も…
「こうくん」
ギュッと鈴さんが自分の手を握る。
「大丈夫、大丈夫だから私も一緒にいるから」
「鈴さん」
鈴さんに手を握られると自然と
震えが収まってくる。
「こうくん…行こう?」
「うん…行こう」
孝介と鈴は、手を繋いであの場所に歩いて行く。
隣に君がいるから大丈夫
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます