告白の後は…【日菜視点】

「それじゃ…またね」


「うっうん」


こうちゃんがこちらを気にしながら、

背を向けて帰って行く。


「…やっぱりダメだったかぁ〜」


こうちゃんが居なくなった事を確認してから日菜は、歩き出す。


あの告白の後、

電車で帰って来て駅前で別れた。

これ以上側にいたら泣いちゃいそうだったから、


「…グスッ…ダメ泣くのは、

 全て終わってから…」


目を擦り必死に涙を抑える。

彼女には、この涙は見せたくない。

そろそろ着くはずだ。


日菜は、公園の中に入って行く

平日だからだろうか人気は、感じられない。

ただ公園の中心にいる一人の女性以外は、


「こんにちは…いえ

 こんばんはの方があってるかしら?」


その女性…いえ鈴は、

こちらに振り向く。


「いやまだ早いんじゃない?」


日菜は、時間を見る、

あぁあんなにも幸せな時間は、

こんなにも、短かったのか…


「フフ…そうかもね」


「それで…?

 こうくんとのデートは、どうだったの?」


「楽しかったよ、…そう…とても」


「…そうそれは、良かった」


日菜は、ブランコの方に向かい

ブランコに腰掛ける。


「それにしても、ありがとう鈴、

 こうちゃんとのデートを許してくれて…」


そうあのこうちゃんを出かける約束をした夜

鈴から、電話がかかって来て、

そこで了解を得ていたのだ。


「そんなのこうくんの自由で

 私がでしゃばる事ではないでしょう?

 まぁ、出かけるのが日菜だからってのもあるけど」


そう言って、鈴も同じくブランコに座る。


「そうなの?」


「当然よ、どこの馬の骨かもわからない女を

 近づかせる訳ないでしょ?

 貴方だから…そうずっとこうくんの

 側で支えていた貴方だから許したの」


「そうなの、それは光栄だ」


私がハハと笑った。

そんな私を呆れた顔で、

「本当は、光栄だと思ってないでしょ?」


「あら?わかっちゃった?」


「当然よ、…友達だったんだから」


「だった?私は、今も友達と思ってるけど?」


「ッ…それは、だって、

 こうくんを取り合う仲だし、

 それに…」


「こうちゃんに近づく為に、

 私に近づいた事?」


図星の様で鈴が固まる。


ハァー気づかないと思ったんだろうか?

鈴たら、こうちゃんの話しになった時だけ

熱心に話しを聞いていたものね?


最初は、私の恋心をわかって聞いてくれていたと思っていたけど、

鈴がこうちゃんの姉と言うことがわかっている今ならわかる。


鈴貴方は、こうちゃんの事を私から、

聞き出したかったんだよね?


「まぁ、今となっては、

 そのことは、どうでもいい」


「えっ…でも私は、日菜貴方を騙していたのよ?」


「まぁそりゃ〜、

 最初は、腹が立ったよ、

 だけど今は、鈴のこうちゃんへの思いを知ったいまなら許せる」


「そっそう…ありがとう」


「どういたしまして、

 それで鈴?私達は、

 今も友達同士でいいんだよね?」


「…えぇ」


「ハハ、それじゃよろしくっ…と!」


私は、ブランコから離れ立ち上がり

鈴の方を見る。


「それと…

 こうちゃんの事を宜しく…頼むね?」


「えっ…?それって…どう言う事…?」


「私…ね、こうちゃんに振られちゃった」


「…そう…なの?」


鈴の予想外の態度に私は、驚いた。

「あれっ知らなかったの?

 鈴ならもう把握してると思ってた。」


「知らないわよ、

 まぁもしかしたらとは、思っていたけど

 そこまで私は、無粋じゃないわよ

 本当よ?今日一日関わらない様にしてたから…」


「そう…ありがとう」


「お礼をいう必要はないわ

 …それより、日菜…諦めるの?」


「…それ鈴が言う?」


「…わかってるわ、

 私が言うのは、おかしいって、

 なのに私自身、何でこんな事

 思っているのかわからないの」


「そう…なら鈴だったらどうする?」


「そんなの諦める事なんてできるわけない!!」


「はは…そうだよね、

 鈴なら、そう言うよね

 …でもそれは、地獄だよ」


「日菜…それって」


私は、思い出すあの日々を…


「…私わかってた。

 こうちゃんの目に、私がいない事も、

 だけど…私は、諦めきれなかった

 だから、私は…」


思い出す…こうちゃんの顔を

自分の恋のために、好きな人を追い詰めていったあの日の事を…


「…だけど、その結果残ったのは、

 ただの後悔と苦しみだけ…

 …ハハ…まぁ鈴は、関係ないかもしれないけれど」

 

鈴は、ブランコから立ち上がり

横に首を振る。


「いいえ、無関係とは言えないわ

 もしかしたら、今立ってる場所が

 逆だったかもしれないから…」


「そう?…そうだったら良かったな〜」


私は、起こり得ないであろう夢を見る。

私の告白が成功して、こうちゃんと恋人になる夢を…ハハ…やめないと

そんな未来は、もう来ないのだから…


「…ねぇ鈴、孝介くんをよろしく…ね」


「えぇ必ず、孝介くんを幸せにするわ」







「…ありがとう」










あと一話、日菜視点続きます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る