弟じゃなくて君が欲しい ②

「いっっ」


「あっ!大丈夫…?痛かった?」


「ちょっと傷に染みただけ」


そう?と姉さんは、

心配そうにしながら、傷の手当てをしてくれている。


あの後号泣し始めた、

姉さんをなんとか宥めて、何とか傷の手当てをする事ができた。


「こうくん…本当に病院に

 行かなくていいの?」


「うん、大丈夫

 それに、病院に行っても

 どう説明すればいいか分からないから」


「そう…

 辛いならいつでも言ってね?」


「うんありがとう…」


「………」


「………」


「……えっと…」


…どうしよう、この後何話せば…

あんな衝撃的な場面を見せてしまった状況で


どうすればいいのか孝介には、

わからなかった。


「…こうくん」


「えっ…なっ何?」


って、

 あの言葉…」


その言葉は、俺が抱きつかれる前に言った

言葉だ…どうしよう…いや…そうだな。


「…うん確かにそう言った。」


「それは、本心…?」


「…姉さん、ごめん」


「えっなんで、私…何かした。

 あっもしかして…」


姉さんは、狼狽えた様子で問いかけてくる。

その言葉に、フルフルと首を張り、

「違うんだ、これは自分の問題」


そう言って、詩織さんとの会話、

そして、自分の心の傷と症状をゆっくりと説明した。


姉さんは、それを聞いて、

唖然としていた。


「それで、俺は、思ったんだ

 いつまでも、過去に、あの幸せな時間に

 しがみついちゃいけないって、

 だから…」


「だから…姉はいらないって…?

 それってつまり、私もいらないって

 事…だよね」


「それは、違う!!

 姉さんとは、ずっと居たい。

 けど治すためには、

 過去にしがみついちゃだめだから…

 ああ、上手く話せない!!」


俺は、この心の傷を治したい。

だけど姉さんと離れたい訳じゃない。

ああもう!どう伝えればいいんだ。

ガシガシと頭をかく。


「…私が、こうくんに

 こんな事言う資格は無いけど…私は」


「姉さん…」


「私は、こうくんとずっとずっと一緒にいたい例え……あ…」


姉さんは、何かに気づいたようで

何かぶつぶつと呟き始めた。


「そうよ…私は、こうくんの側にいれたら、

 それでいいの…そう側に…あ…フフ…

 …そうよ…ハハ…フフ…ハハハ」


急に笑い出した姉さんに、

孝介は、どうすればいいか戸惑っていたが、

「こうくん」

と突然名前を呼ばれる。


「なっ何?姉さん」


「こうくんの話しは、理解したわ

 それでこれから、具体的にどうするの?

 過去と決別するんでしょ?」


「そっそれは…」


孝介は、態度が急変した姉さんに驚きながらも、ポケットに入っていた。

鍵を取り出し姉さんに見せる。

 

「…あぁなるほど、に行くのね」


姉さんは、察しがついたようで、

うんと頷く。


「わかったわ、それでいつ行くの?」


「…明日にでも行こうかと」


「…だめよ、そうね来週にしましょう」


「えっなんで」


「その顔であそこに行くつもり?」


「あっ…そうか」


自分の今の顔が酷いことに気づく。


「わかった?、

 フフ…それじゃ来週で」


「あっうん」


何故か上機嫌の鈴とは、対照的に、

孝介は、ただ頷くことしか出来なかった。











こんにちは、ここまで読んで頂きありがとうございます。

そろそろ、この五章も終わりに近づいて来ています。

頑張って投稿しますのでよろしくお願いします。

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