弟じゃなくて、君が欲しい①

「……え…?」


(どっどう言う事?)

幻想の姉さんが急に抱きついてきて、

それを払い除けようとしたが、

一向に離れられないし、


そもそも、幻想のはずの姉さんから、

匂いや温もりを感じる…それってつまり…


「…本物…?」


「…大丈夫大丈夫だから」


…どうやら本物ようだ。

姉さんは、震えながらずっと

落ち着かせようと抱きしめながら、

背中をさすってくる。


孝介は、急に本物が現れた事で、

どうすればいいかわからなかったが、

抱きしめられ姉さんの温もりを感じる事で、

正気に戻っていた。


自分が怪我していて、

自分の血が姉さん服についている事に気づいた。


「姉さん、ごめん…離れて、

 ほら、服に血がついちゃうから」

「いや!、離さないわ!!

 離したら離れちゃう」


「えっとそれは、まぁ離れますけど」


「…っ!やっぱり、私は、こうくんの側を

 絶対離れない…一生!!」

「一生!?」


「それに、離れたらこうくん自分の事を

 傷つけるじゃない。」


「うっ…それは…」


今の状態の自分が何を言っても、

説得力がないだろう。

だけどこのまま顔を血まみれのままでいるのは、気持ち悪いし落ち着いたからか、

じんじん痛みも感じ始めて来た。


「…わかったよ姉さん

 俺は、離れないし

 自分を傷つけないから、

 せめて、顔を洗わせて?」

 

「えっ本当?……あ…」


姉さんが嬉しそうに顔を上げるが俺の顔を見て、ピシッと固まった後


「こうくんの顔が!!ああ…

 こうくんー!!」

と号泣し始めた。



あの…心配してくれるのは、

嬉しいのだけど痛いから

顔を手でペタペタ触らないで…

 

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