日菜の告白
ガチャ
「詩織さん、ありがとうございました」
孝介は、部屋から出ながら詩織にお礼を言う
「いいえ、これも仕事だから、
…っと、それじゃ頑張ってね」
「えっあっはい」
詩織さんは、そう言うとさっさと部屋の中に
戻ってしまった。
おかしいな?
いつもなら、玄関まで
着いてきてくれるのに…
「…こうちゃん」
「ビクッ!、日菜姉どうしたの?」
突然に呼ばれて、
そちらの方を見てみるといつの間にか
日菜姉が立っていた。
「…どうしたのって、
ここは、私の家よ」
「はは、そらそうだ」
「こうちゃんは、もう帰るの?」
「えっ?うんそのつもりだけど」
「…そうわかったじゃ玄関まで送るね」
スットントン
靴を履いて振り返る。
「それじゃまたね、日菜姉」
「…うん」
孝介は、玄関から外に出ようとすると
「こうちゃん」ギュ…
日菜姉が後ろから抱きしめてきた。
「えっ!?日菜姉どうしたの?
…日菜姉?」
日菜姉に呼びかけるが
日菜姉は、ただ無言で腕の力を強めるだけだった。
そんな日菜姉に、
戸惑っているとポツポツと日菜姉が喋りだした。
「ねぇこうちゃん、…逃げてもいいんだよ」
「日菜姉…」
「人なら、トラウマの一つぐらいあるものよ
わざわざ乗り越える必要なんてないわ」
「でも…俺は、姉さんの為にも」
「そんなの必要ない!!
鈴は、こうちゃんを一度捨てたのよ!!
何でそんな女の為に、
こうちゃんが頑張らないといけないの?」
「いや姉さんにも理由が」
「理由があろうが関係ない
捨てたのは、変わらないんだから!!
まるで呪いよ
ずっとこうちゃんに纏わりついて」
「…でも何でそこまで」
「えっ…?」
「だから、何でそこまで姉さんの事を」
俺がいい終わる前にフッと
日菜姉の抱きしめていた腕の力が抜ける。
そこで日菜姉の様子を見ようと振り返ると…
日菜姉の手と顔が近づいてくる。
「えっ日菜…!!」チュ…
日菜姉の唇が自分の唇に触れる。
(えっ…俺…今キスされた?)
咄嗟に孝介は、日菜を引き離す。
「…何でって言ったよね、これが答え
自分の好きな男の子を傷つけられて、
黙ってる私じゃないのよ」
そう言って、日菜姉は笑う。
「今…好きって…」
「そうだよ、こうちゃんいや孝介くん
私は、出会った時から
君のことが好きです」
うそ…だろ、日菜姉が俺のことが好き?
「信じてないの?
私のファーストキスあげたんだけどな…」
そう言って日菜姉は、自分の唇を触る。
そんな日菜姉の姿に
ドキリとして、視線を逸らす。
「…やっぱり、私の事は、見てくれないんだね」
日菜は、それを拒絶と捉えてしまったのだろう。
「えっいや…」
「こうちゃんは、ずっとそう出会った時から
お姉ちゃんお姉ちゃんってそればっかり、
去年ぐらいから…
やっと私を見てくれる様になったのに…
鈴と会ってから、また姉さん姉さんって」
「いや俺は、日菜姉の事もちゃんと」
「ちゃんと見てたなら、
私からこうちゃんへの
好意も気づいたはずよね」
「………」
「…冗談、こうちゃんは、
気づくはずないもんね
だから、私は頑張った…頑張ったの…」
日菜姉は、顔を歪める。
「だけど頑張れば頑張るほど
こうちゃんは、離れていく、
…だからもういい」
そう言って日菜姉は、自分の服に
手をつけスルスルと脱いでいく
「日菜姉…何…を?」
「ねぇこうちゃん、私ね
こうちゃんの為ならなんでもできるよ
だからね私を見て…?」
日菜は、ゆっくりと近づいてくる。
孝介は、日菜と距離を取る様に後ろに後ずさる。
「日菜…姉、こんなのおかしいよ」
「おかしい…?フフ…
呪いに縛られてるこうちゃんには、
お似合いじゃない」
そう言って、日菜姉は、
涙を流しながら近づいてくる。
「だからね…こうちゃん
私を見て?」
「…俺は…おれ…は…」
ガチャ
「ただいま…えっ…お姉ちゃん?孝介?
…何この状況?
って、ちょ孝介!?」
「あっ…待ってこうちゃん!!」
孝介は、開いた玄関の扉に立っていた里紗を
押し退け家を飛び出した。
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